ザ・緊縛
(DC2 9話)
銀髪の男は木製の椅子に座った状態で、動けないようにロープでぐるぐる巻きにされている。
キヨタカが手をパンパンと払いながら、自慢げに言った。
「これで動けないだろう」
それを見たタマキが感嘆の声を上げる。
「さすが隊長です。すごいです」
タマキの純粋な賞賛に周りは一瞬ざわめいた……が、誰一人突っこむものはいなかった。
「捕縄術は警察の基本だからな」
キヨタカが気にせずタマキに答える。
「ほじょうじゅつ?」
「そうだ。敵を縄で捕縛・緊縛する為の技術だ。早縄なんかは取り押さえた敵を素早く拘束する為の技術だ。本縄は犯罪者の護送用に使う縛り方だ。他にもいろいろあるぞ」
「…いつの時代の話だよ。手錠が一般的の現代に何を言ってるんだか……」
カゲミツが後ろでぼやく。
「で、これはなんという縛り方なんですか?」
タマキの声に、また周りが固まる。
キヨタカが口を開けようとしたとたん、横槍が入った。
「えーっと。お兄さん、そろそろこの子に尋問したいなぁ〜なんて思うんだけど」
トキオの声にみんな一斉に反応する。
「そうそう」
「そうですね」
ナオユキとユウトがホッとしたように、その言葉に続く。
「僕も講釈より実践するほうが好きだし」
「おい…」
アラタの言葉に何か突っこもうとしたカゲミツだがそのまま押し黙った。
「そうだな、始めようか」
キヨタカも渋々頷く。
「しかし……服の上からだといまいちなんだよな」
キヨタカがぼそりと呟いたのを聞いて、ヒカルが震え上がった。
(振るな……。俺に振るな〜〜!)
その願いは虚しく、キヨタカがヒカルのほうに振り向く。
それから、蠱惑的な微笑みを浮かべながらヒカルの耳元に囁いた。
「今度試してみないか?」
蒼白になるヒカル。
そんな内情を知らないタマキが、心配そうに声を掛ける。
「ヒカル、顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ。……尋問始めようぜ」
その後、ヒカルがどうなったか知る者は、誰もいない。
【その後のミーティングルームの会話】
「しかし隊長はああいうの何処で練習するんだろうね」
「さあ……」
ユウトの問いに言葉を濁すナオユキ。深くは考えたくないらしい。
「タ、タマキはしきりに感心してたけど、ああいうの興味あるのか」
「うん」
「す、するのが? されるのが?」
「するほうに決まってるだろ」
「マジかよ!」
「あはは、カゲミツ練習台になってやったら?」
トキオの突っこみに、真っ赤になるカゲミツ。
(いや、案外イケると思うんだけどね。亀甲縛りされるカゲミツってのも…)
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