CROSS DELUSION
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マダムキラーに首ったけ
「タマキ〜! トキオは?」

「今日は、婦人会の人の集まりに行くとか言ってたな……」

「それはやばいんじゃない?」

「うん」

子供たちの言葉に思わず首を傾げる。

「……なんで? 寄付集めの為に、こういう交流も大切だろ?」

「いや……。そうなんだけどさ」

「なんだよ」

「婦人会の連中ってみんな、トキオのファンばっかだよ」

「そーだよ」

「だから?」

「トキオ狙われてるよ」

「ねら……大丈夫だよ。いくら狙われたからって……」

……浮気するわけないし。

「トキオも、ここぞとばかりにおねだりするよ」

「おねだり?」

「この間も、それで高額寄付せしめたって言ってたもん」

「そーだよ。トキオ、マダムキラーって呼ばれてるんだぜ」

「マダ……。誰に!?」

「前の院長」

「じょ、冗談だろ……」






子供たちが出かけて、片付けや掃除に追われている間はろくに考える時間もなかったが。

一息ついて部屋に戻ると、とたんに気になってくる。

マダムキラー。

妙に納得してしまう。

トキオの卒のない態度とか。

物腰の柔らかさとか。

それにあの色っぽい眼つきとか。






『なんなら、交渉した時のテクニック、試してみる?』

『甘い声で囁いて、上目遣いで見つめるんだ。それからお願いするんだけど……』

あれはくる……。

された自分がわかってる。




あんなのされたら──!










トキオが帰ってきて。

今日の仕事を片付けて。

ようやく二人になる。

「なあ……」

「ん?」

「大丈夫だったか?」

「何が」

「…おばさんに言い寄られたりしなかった?」

「言い寄ら……。タマキ、また何か、子供たちに吹き込まれた?」

「……マダムキラーって呼ばれてるって……」

「ああ〜〜あれね」

納得したようにうなずくトキオ。

「やっぱりそうなのか?」

「俺が院長のお供でたびたびそういう会に出た時、おばちゃん、おばあちゃん受けがよいから院長がそう言ってただけで………何年前の話だよ」

「高額せしめたって…」

「あれは、婦人会の主催の料理教室の講師に呼ばれて…。全然高額じゃないってば。子供にはそう言ったけど……」

「……」

「もちろん、そういうことがまったくないとは言わないよ。……でも、タマキと付き合うようになってからは浮気はしてないよ」

正直な言い方がトキオらしい。

過去の女性遍歴や女隊長の事とか……気にならないといったら嘘になる。

けど、それも含めてトキオの全てが好きなんだから、しかたがない。



トキオがタマキの傍に近づいてくる。

「ね……信じてよ。お願い…」

そして、耳元に口を寄せられる。

「タマキだけが好きだから…」

鼓膜に響くような低く甘い声で、囁かれ……。



俺はその首に抱きついた。





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