パンプアップ!
「もう、腕がパンパンだよ」
「うん。結構頑張ったかな」
腕を持ち上げながら、ナオユキが満足そうに頷く。
二人でいったジムで。
こっちがバテそうになるメニューを嬉々としてこなしていくナオユキ。
終盤にはいると、本当に筋肉がパンパンのパンプアップ状態になる。
「でもさ、パンプアップの度合って、ちゃんと筋肉を鍛えるだけのトレーニングになったかどうかを判断できていいだろ」
「まあね」
限界まで筋肉を追い込むと血液中に乳酸などの代謝物質がたまり筋肉痛になり熱もたまってくる。
そのため筋肉内に水分を引き込み一時的に筋肉がふくらむ。……この状態がいわゆるパンプアップだ。
「トレーニングの充実感に繋がるんだよな。……ほとんど快感って感じ?」
「快感……」
ナオユキのストレートな物言いに絶句していると、何を勘違いしたのか慌てて付け足してきた。
「あ、でもユウトとの快感には全然及ばないというか、比べものにならないからなっ」
「……ちょ……」
益々、自分の顔が赤くなっていくのが解る。
なにをいきなり……。
思わず回りを見渡してしまう。
ナオユキって、普段クールで冷静沈着なキャラクターだけど、二人でいる時はけっこう無邪気で無防備だ。
こうやって、心を許してくれているところはすごく嬉しいんだけど、時にはこういう不意打ちに度肝を抜かれる。
焦る自分とは反対に、涼しい顔をしてナオユキは、クールダウンに入っていた。
自分も、激しい動悸を抑えようと思いながら、隣のマシンでウォーキングを始める。
「後で、マッサージもよろしく。……ユウトのマッサージすごく気持ちよくて好きだから」
「う……うん」
「俺もちゃんとしてやるからな」
ウインクしながら微笑むナオユキを前に。
……クールダウンで、この火照りを抑えられるのか。
はなはだ自信はなくなった。
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