今夜も眠れない
(DC2 17話〜18話)
「あいつを片付けなければ前に進めないな」
「……殺すのか?」
「そうだな。障害になるなら已むを得ない」
「……っ」
淡々と言うキヨタカの言葉に。
カゲミツが、沈んだ表情を浮かべてうつむく。
「最悪の場合だ。そんな顔すんな」
俺は、元気づけようとカゲミツに笑いかけたけど。
あの時、自分の中で渦巻いた感情は。
間違いなく嫉妬だった。
オミとカゲミツの間には深い確執があって、自分には太刀打ちできないと──
事あるごとに感じさせられる。
彼らが再会した時から…。
過去の話を聞いた時も、以前相談を受けた時も、オミと対峙する時も、ずっとずっとずっと。
自分の入る余地はないのだと痛感せずにはいられなかった。
だから、あの時も過剰に反応してしまった。
スラムの病院で、俺の前に出たカゲミツが、オミに銃口を向けられた時。
「バカ、前に出るな!」
割り込むように、カゲミツの前に出たけれど。
銃に打たれる心配はもちろんあったが、このまま二人の絆を見せ付けられるのが嫌だったのだ。
理性では、彼らに話させるほうがよいと思っていても。
感情がそれを許さない。
『撃たれたらどうするんだ?』『俺に任せろ』『落ち着いて欲しい』
どれも、お為ごかしだ。
『頼む、カゲミツ』
最後の言葉は、止めたいがゆえの懇願だった。
項垂れるカゲミツを見ながら。
また、彼を傷つけてしまったことに、胸が痛んだ。
* * *
トキオのおかげで交渉成立して。
ヒサヤを抱き上げたカナエが霊安室に向かい、トキオがオミに付き添って診察室に入った後。
廊下で俺とカゲミツは暫く待つことになった。
「さっきはごめん」
躊躇いながらかけた言葉に、カゲミツはきょとんとした顔を向けてくる。
俺は、さらに言葉を続ける。
「前に出るなと言って……ごめん」
「な、なにを謝るんだ? ……そんなの、当然の事だろ」
「違うんだ!」
堪らなくなってカゲミツに抱きつく。
「タマキ!?」
驚くカゲミツに構わず、さらに強く抱きしめた。
「あれは……。俺のエゴなんだ。お前とオミに嫉妬して…引き離したかっただけに過ぎないんだ。ごめん」
「嫉妬って…何を……」
要領を得ないという感じで、覗き込んできたカゲミツに──。
衝動のままに、キスをする──。
今更ながら、自分の感情を自覚した。
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