CROSS DELUSION
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最後の意地悪
「カゲミツが好きだ。心から」

そう、微笑みながら答えるタマキ君を見て。

感じたのは。

安堵?

それとも落胆?




「そう……。それは……よかった。……気になってたんだ…」

「なかなか吹っ切れなかったけど、あいつのおかげで立ち直れた。カナエにも心配かけて悪かったな」

「そんな……」

「だから、俺の事はもう心配しなくていいから。……お前もレイと幸せになれよ」

「…ありがとう」

「カナエのこと。ほんと好きだったよ。……その気持ちはずっと忘れない」

(…「だったよ」……か……)

過去形になってしまった俺たちの関係。

吹っ切れて、迷いのない瞳のタマキ君。

彼はいつでも、彼らしく、自分の道を進んでいく。

……なのに、俺は引きずったままで。

自分の思い切りの悪さに、歯噛みしたくなる。

「俺も……」



言葉を続けようとして、ふと人の気配を感じた。

半開きになったドアの前で躊躇してるのは。

たぶんカゲミツ君だ。




「俺もタマキ君の事、好き……」

そこまで言って、言葉を切り、タマキ君をぎゅっと抱き寄せた。

そして耳元でそっと囁く。外には聞こえないくらいの大きさで。

「好きだった…よ。……カゲミツ君と幸せに」

それからおでこをコツンとあわせた。

タマキ君にとってはおまじないのポーズにしか思わないだろう。

だけど、後ろから覗いている彼にはキスしているようにしか見えない。

「あ、ありがと」

タマキ君が照れながら顔を上げるのをみながら、そっと腕を解いた。




くだらない事しているのは分かってる。

だけど、最後にちょっとだけ意地悪させてよ。

もう、これ以上は邪魔はしないから。

いま少しだけ、俺を好きな彼をくれないかな。

どうせすぐ解ける誤解だから。





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