lingering affection
タマキ君が、カゲミツ君と同棲するようになった。
最近の彼らは、はたから見ていても、熱くて当てられる。
俺はタマキ君を振った人間だから。
とやかく言えるような立場じゃない。
ただ、もやもやとした黒い感情だけが、広がっていった──。
「カゲミツ君」
解散後のミーティングルームで、資料と機材の片づけをしていたカゲミツ君に声を掛ける。
もう他のメンバーは引けたあとで、部屋には俺たち二人しかいなかった。
「ん、なんだ?」
見上げるカゲミツ君は、今までとは格段に優しい表情をしていて、俺に対してみせていた剣のある感じがなくなっている。
余裕のある彼の態度に、ますますイラついてくる。
「片付け……手伝うよ」
そういいながら、しゃがむ。
足元の、コードなどを手に取った。
「サンキュ」
「タマキ君はもう帰ったんだ……」
「ああ、一足先に、飯作る為にな」
「そう……」
「………」
「仲良く……やってるみたいだね……」
「まあな……」
お互い黙々と作業を進める。
「タマキ君、元気?」
「まあ、見たとおり……」
「俺の事は、もう吹っ切れたのかな…」
「………」
「あんなに泣かしてしまったから……」
イライラした様子で、カゲミツ君が道具箱の蓋を閉めた。
「お前、何がいいたいんだよ」
声を荒げて、カゲミツ君が俺を睨む。
「ただ、……タマキ君の事が心配なだけだよ……」
「もう、お前には関係ないだろ。余計な口出しすんなよ」
「関係なくはないよ。……だって、俺はまだタマキ君の事が好きだし。……嫌いで別れた訳じゃないからね」
「な…んだと」
「まだ未練あるんだ。……きっとタマキ君も」
「仮に、そうだとしても、それを振り切る為に俺と付き合うようになって。現に俺たちは、あ、愛し合って……」
「ほんとに?」
そう言いながら、カゲミツ君の腕を掴んだ。
振り払おうとしたもう片方の手も、簡単に押さえる。
「ほんとに、タマキ君は君を愛してるの? 君に満足してる? ……君はタマキ君を満足させてるのかな?」
「な…」
「ね……。教えてあげようか? ……タマキ君の感じるところ……。好きな愛され方……」
そういいながら、カゲミツ君の耳に唇を寄せる。
そして、ゆっくりと耳朶を舐める。
「い……いらねえ…よ。……お前のやり方なんか真似したくもねぇ」
「そんな目で言わないでよ。……余計に煽られてる気になるよ…」
「や……やめろ……」
「ふふ……君が俺に、腕力で勝てると思う?」
そのままソファーに押し倒す。
「カナエ……っ……」
「タマキ君に言うわけにもいかないし、もって行き場がないんだ……。この気持ち……。もうカゲミツ君にぶつけるしか……」
「ん……っ……や……」
「知ってよ。……これが俺の愛し方だよ。……タマキ君の……」
ねえ……俺を知って。
タマキ君を愛する俺を……。
君が…。
君だけが──。
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