CROSS DELUSION
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ダウト
(タマカナ・プラチナエンド後)


「じゃ、カナエから」

カードを配り終えたタマキが促した。

「1」

カナエがカードを裏向けながら1枚置いた。

「2」

次はタマキが、その上に置く。

「3」「4」「5」「6」……

お互い順調にカードを出していった。

タマキはじっとカナエの表情を伺う。

(きっと、少しは表情に表れるはず・・・)

だが、カナエは始終涼しい顔をして出していく。違うカードを出してるなんておくびにも出さない。

「13。はい、おしまい」

カナエが両手を挙げて、カードがないことを示す。

「えっ…。て? なんで! 俺まだ、半分も出してないぞ!」

「やだなあ、タマキ君。ダウトは複数のカード出してもいいんだよ」

にっこり微笑むカナエ。

「わ、わかってる。・・・て、そんなうまく終わるはずが・・・ダウト!」

最後のカードを表向けると、そこにはスペードのキングが鎮座していた。

「〜〜〜」

くやしさに、声にならない呼気がわずかに声帯を振るわせ、漏れ出る。

表情にかまけて、手元を見るのをすっかりおろそかにしていた。

「もう一回」

タマキはカードを手繰り寄せると、切り始めた。


「よし、今度こそ」

「どうぞ」

今度は自分から出す。

「1」「2」「3」「4」………

今度は手元もしっかりチェックしながら、カナエの表情を伺う。

「えっと・・・12」

一瞬戸惑ったカナエを見てすかさず、声を掛ける。

「ダウト」

しかし、めくってみるとそこにちゃんと正しく、ハートのクイーンが現れた。

「くそっ・・・」

こぶしを握り締めながら、うつむくタマキ。

「俺は嘘が上手いって、言わなかったっけ?」

にこやかに微笑みながら、カナエがタマキの顔を覗き込む。

「まだ終わったわけじゃないぞ」

出されたカードを集めて手札にしながら、タマキは挑むように言う。


その後何度も挑戦したものの・・・。

「タマキ君、ダウト!」

「〜〜〜」

「タマキ君のほうが、実は表情わかりやすいんだよね」

* * *

「はい、上がり」

「なんで!」

「いや、とりあえず、最後にあわせて出せばいいから」

* * *

「くっそー」

悔しい。

だけど、こうも鮮やかに勝ち続けるカナエも格好いい…。

そう、思ってしまう時点で重症だと自覚する。

「嘘がつけなくて、すぐに表情に出るカナエはどこに行ったんだ」

それでも、思わずそうつぶやいたタマキ。

「そんなの最初からいないんだよ」

「ヘタレのお前は・・・」

「それもね・・・」

そう言いながらも、少し心配そうに尋ねるカナエ。

「・・・ヘタレじゃない俺は嫌い?」

それを見て、タマキは思った。

ポーカーフェイスをきめることが出来ても、ヘタレのカナエも確かにこいつの中に存在するんだと。

「う・・・ん。ヘタレのお前も好きだけど…」

腕を伸ばして、首を引き寄せる。

「今のお前はもっと好き」

狼狽するカナエに少し満足しながら、タマキは口付けた。





(END)

2010/03/02

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