ある日の諜報
ワゴンで諜報作業中。
「なんていうか…。結構ショックだったんだよね」
「何が?」
「お前の態度」
「俺の何の態度が?」
「タマキへの態度」
「俺のタマキへの態度がどうショックなんだよ」
お互いに、自分の画面を見ながら掛け合い漫才?を繰り広げるオミとカゲミツ。
「お前、学生時代から俺への態度は終始つれなくて、ツンなところしか見せてくれなかったのに、タマキへのあの犬っぷりはなんだよ」
「犬って……。そんなことねーよ」
「無自覚なの?」
「あー、無自覚かもな」
ヒカルも口を挟む。
「俺がどんな態度を取ってるっていうんだよ」
「見たい?」
くるりと椅子を回してカゲミツのほうに向き直るオミ。
「?」
何をするのかと構えるカゲミツ。
「じゃ、見せてあげる」
そして、方眉を上げてフンと軽くため息を付いてから、下を向いた。
「……って、おい?」
カゲミツが不審そうに、覗き込もうとすると、一瞬遅れてオミが顔を上げた。
しかし、その表情は先ほどとは一変して、恥ずかしそうに頬を染めている。
「えっとさ、カゲミツ……。今度俺とデートしないか?」
そう言いながら、頬をぽりぽりと掻いてみせる。
「き………。気色悪ぃ〜」
あまりの変貌に仰け反るカゲミツ。
横で腹を抱えて笑うヒカル。
「ね、気色悪いだろう?」
再び、冷ややかな表情に戻り、そう言い放つオミ。
「これが君の態度だって言うんだよ」
「に、似てる〜。そっくりだ。は、腹痛てぇ〜」
「お、おおお、俺がそんな態度取ってるというのかよ」
「取ってるよ。尾っぽをちぎれんばかりに振ってさ。……初めてあれを見たときは一瞬何が起きたんだと思ったよ。……二回目も同じような事して叱られてしゅんとしているのを見た時は無いはずの耳と尻尾が垂れてるのが見えるようだったよ。…さすがに三回目にデート誘うのを目の当たりにした時はもう慣れたけど」
「べ、別に普通にしているつもりだけど……。そ、そんな変か。タマキに気色悪いとか思われてんのかな……。それはヤバイな。ど、どうしよう〜」
本気で悩むカゲミツ。
「いや、タマキはそういう小さい事にはこだわらない奴だから。大丈夫だよ」
ヒカルが慰める。
「それに、オミだってそんなにカゲミツに好かれたいなら、普段から柔和な態度で接しろよ。いきなりそれじゃカゲミツがびっくりしちまう」
それから、矛先をオミに向けた。
「なにを言ってるのさ。君は」
ムスっとした表情で答えるオミ。
そこに、ドアを開けてキヨタカが入ってくる。
「いやー。素晴らしかった。名演技だったな、オミ。……しかし、カゲミツと決定的に違うのはそこで冷めた顔してしまうところだ。……愛され弄られキャラになろうと思ったら、ここは焦って思いっきり否定しなきゃならんな」
「………」
キヨタカを見上げるオミ。
そしてにわかに、顔を赤らめて叫ぶ。
「な……。俺がカゲミツを…す、好きだなんて! そんなことあるわけないだろう!」
「おおー。いいな、それ」
拍手するキヨタカ。もとの表情に戻るオミ。
「……こんな感じですか? …別に愛され弄られキャラになろうとは思わないけどね」
「いや、カゲミツはそういうのに弱いから。効果あるかもしれないぞ」
「そうそう。けっこう同情しやすいから、こいつ」
キヨタカとヒカルがうなずいている横で、疎外感を感じつつ、割り込むカゲミツ。
「何の話をしてるんだよ…。お前ら」
「お前には関係ない話」
「お前に関係する話」
「むしろ、お前だけに関係する話」
「どっちだよ!?」
ますます混乱するカゲミツだった。
《END》
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