CROSS DELUSION
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キスと煙草の匂い
「お前、いったいどういうつもりだよ」

「どういうつもりって?」

「タマキにあんなマネしやがって」

「ああ……あれね……」

ワゴンの中。

諜報活動中の二人。

ヒカルは、キヨタカと資料作成で出て行ったところだ。

カゲミツはオミのほうに向き直って、険しい目を向ける。

あんな事があった、昨日の今日で。

とてもじゃないが仕事に集中なんて出来なかった。

「まさか本気じゃないだろうな……」

オミは、作業中の手を止めて緩慢な動作でカゲミツを振り返る。

それからなにも言わずに、胸のポケットから煙草を一本取り出すと、口に咥えた。

「おい、ワゴンは禁煙だぞ」

そんなカゲミツの言葉を無視して火をつける。

火は一発で付かず、オミが小さく舌打した。

「……本気だったらどうするの?」

ことさらゆっくり煙を吸い込みながら、カゲミツを見つめる。

それは苛立ちを感じながら、平静を装っているように見えた。

(まさか、本気なのか…)

「なっ……。そんなの俺が許さねーぞ」

思わずカゲミツが声を荒げる。

「許さないって言われてもカゲミツに何か出来るとも思えないけどね…」

ふーっと斜め下に煙を吐きながら、呆れたように眉を少し上げるオミを見てカーっと血が上った。

「なんだとっ!」

思わず殴りつけようと繰り出したカゲミツの拳は、オミの掌でいとも簡単に捕らえらる。

そのままその拳を握りこむように掴まれた。

「ほら…ね……」

そういいながら、煙草をもみ消すと、もう片方の手も掴まれる。

そのまま、顔を覗き込むように近づけてくる。

「な、なんだよっ」

「そんなにタマキが好き?」

囁くように尋ねられる。

「あ、当たり前だろっ。……お前なんかにやらねーぞ」

必死に睨みつけるカゲミツに、オミがククッと笑いを洩らす。

「だったら、カゲミツが俺の相手をしてよ……。なら、タマキには手を出さないよ」

「…なっ……」

「俺がタマキを好きだって焦った? ……なら心配ないよ。……俺が本当に好きなのは……君だから……」

そのままゆっくりと、唇を塞がれる。

「……んっ……」

口内に煙草の味が広がった。

「やめ……っ……」

顔を逸らし、オミから逃れようと体を捩った瞬間、バランスを崩して椅子から転がり落ちる。

「痛っ……」

そのまま上から押さえ込まれてさらに身動き出来なくなった。

オミはカゲミツの両手を握り締めながら、折り重なるように体を合わせてくる。

「好きだよ……。カゲミツ……」

再び唇が深く重ねら、舌を差し込まれた。

それから、ゆっくりとカゲミツの舌に絡ませてくる。

したたか打ち付けた後頭部と背中がジンジンと痺れるように痛んだ。

だけど、口腔を弄られるうちに、別の痺れが背筋を這い上がってくる。

「……も……やめ……んっ…」

舌を絡める淫らな音と、熱く漏れだす吐息だけが車内に響く。

カゲミツはいつの間にか煙草の味が消えていることを感じながら……。

溢れる唾液を飲み込んだ──。


《END》


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