帰ってきてよ
(カナ←レイ・10話〜玩ばれる者〜その後)
「・・・カナエが帰ってこない」
レイが、テーブルに肘をつきながら呟いた。
「情が移ったんだろうな。馬鹿な奴」
スパロウが、報告書に目を通しながら答えた。
J部隊殲滅後、「みんな、先にもどっていてくれる?」と言って、爆破するために残ったカナエ。
そのあと、彼は消息を絶った。
翌日の新聞には、ビルの爆破が大きく取り上げられており、諜報の確認でも、部隊の全滅は間違いなかった。
裏切ったわけではない・・・。
「気持ちの整理がついたら戻ってくるさ」
レンが慰めるように言った。
「ちゃんとレイが淋しがってるって伝えたよ」
カイトもそれに続いた。
「それに、・・・あいつが居る。きっと戻ってくるさ」
報告書の写真を見ながらスパロウが言った。
そこにはタマキやカナエの両親についての報告書が記されている。
「まさか、あいつらが親戚関係だったとはね」
・・・任務を受けた時のカナエの表情が蘇る。タマキの写真を見て、わずかに動揺した。
それを見て、スパロウは嫌な予感がした。
あの時、感じた予感はこれだったのか。
こんなことなら、レイと組んで潜入させればよかった。
いや。アマネのことだから、分かっていてやったのかもしれない・・・。
「親戚だからって何さ。それが戻ってる理由になるの?」
レイがヒステリーを起こしたように叫ぶ。
「大丈夫だよ、レイ。お前のために帰ってくるさ」
カイトがレイの頭をポンポンと優しく叩く。
(それはどうかな・・・)
スパロウは思ったが、これ以上レイのヒスに付き合う気はないので、口には出さないことにした。
きっとカナエは戻ってくるだろう・・・。
それが、あいつを取り戻す為か、組織に戻る為かはまだわからない。
ただ、彼のために戻ってくる・・・。そんな気がした。
「とりあえず、まだ、裏切ったわけではない・・・」
まだ・・・。
(END)
2010/02/25
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