想いを消せやしない
(DC2トキナオ風ユウナオ)
勢いよく、ミーティングルームに飛び込んできて、テーブルでノートパソコンを広げていたトキオの前に近づくと、ナオユキは思いっきり叫んだ。
「トキオさんが好きだ!」
いきなり、告白されて、鳩が豆鉄砲食らったように驚いて、両目を見開くトキオ。
でも、すぐいつもの調子で返してきた。
「俺も、ナオユキの事が好きだよ。告られて光栄だな」
にっこり笑いかけるが、ナオユキはまだ何か言い募ろうと必死な顔をしている。
「俺は…ずっと、あなたに憧れていて……」
「あなたのようになりたくて…」
「もっと強くなって…」
「もっとタフになって…」
「もっと恰好よくなって…」
「人から守られるだけじゃなく、守るような存在になって…」
「ユウトに庇われるだけの存在になんかなりたくなくて…」
そこまで言って、感極まったナオユキがポロポロと涙を流し始めた。
「なのに……ユウトが……」
声を詰まらせる。
(あらあらあら…。なるほど、そーゆー事)
トキオは立ち上がると、ナオユキの肩に腕を回すとそっと抱き寄せた。
「なのに、ユウトが解ってくれないんだ?」
「ん……」
「憧れの感情と、恋愛感情って…別ものだからねぇ」
「恋愛かどうかとか、判らない……。だけど、俺の心をトキオさんに占領されてるのも事実で、それをユウトが快く思ってないことは判るんだ。…トキオさんの事が好きだよ。ずっと好きだった。…この気持ちは紛れもない事実だ。この想いを消せやしないのに…」
「うん…」
「どうすればいいのか判らなくて…」
「んじゃ、ま。俺への気持ちが恋愛じゃないってところだけでも証明すればいいんじゃない?」
「え……?どうやっ……」
顔をあげて、訊ねようとした時には、トキオの顔が迫ってきていて…。
そのまま、キスされた。
「ん……っ……」
驚いて、思わず腕で押しのける。
「な……何するんですか!」
「嫌だった?」
「そういう気は全然ありません!」
「…だってさ」
肩をすくめながら、ドアのほうへ顔を向ける。
「?」
なんだろうと思って、ナオユキが振り向くと、そこにはドアの取っ手を握り締めて、真っ赤になっているユウトの姿があった。
そのまま、つかつかと二人に近づいてくると、ナオユキの腕を掴んで、トキオに向き直る。
「そういう気もないのに手を出すのはやめてください」
「えー。そういう気がないとは言ってないよ。ナオユキは可愛いから。…心配ならちゃんと捕まえておきなよ」
「そうします」
ユウトが腕を掴む手に力を入れたのが見て取れて可愛いので。
つい、挑発的に付け加えた。
「憧れ高じて恋愛ってのもあり得るからね」
「なっ…。失礼します!」
そのまま、ナオユキを引きずるように出て行った。
「うーん…。二人とも初々しくて可愛いよ、まったく。…願わくは、あのままの二人でいて欲しいんだけどね。…じれったいのも事実なんだよなぁ…」
トキオはそう呟くと、またパソコンに向かった。
ユウトを煽ったのが、功を奏するか…。
しかしながら……あの二人がくっつくのには、このあとまだ数か月の時間が掛かるのだった。
2010/05/06
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