これでいいのだ
(ピロートーク)
「で、結局ユウトが言ってたタマキのするのが上手いってのは……」
ベッドに寝転がり、肘をついてタマキのほうに向く。
心も体も満たされら、今度はいろんな疑問が浮かんでくる。
「ああ、マッサージのことだよ」
(あのヤロー)
まさかユウトまで一役かんでるとは思わなかったからすっかり騙された。
よく考えたら抱くとか抱かれるとか一言も言ってないことに気づけることなのに。
「ただで寝泊りするのも気が引けるから、ナオユキにいろいろ教えてもらってさ。結構上手くなったんだ。……カゲミツも試すか?」
そういいながら、タマキがカゲミツの肩に手を伸ばしてくる。
「ああ是非……いや、タマキにマッサージなんかされたらヤバいんじゃないか、俺」
「大丈夫」
「えっ、タマキ?」
タマキがカゲミツの背中に乗ってくると、肩を揉み始める。
背中へのマッサージと、素肌のタマキの重みを背中に感じて、カゲミツは焦った。
とてもじゃないが、マッサージに集中するのは無理だ。
「どこもかしこも気持ちよくしてやるから」
「あっ、タマキ……つあっ……」
マッサージとも愛撫ともつかない、タマキからの施しに、やがてカゲミツは快楽の海にのまれていった。
****
そのころのキヨタカとヒカル。
「な、上手くいっただろ?」
「なんだよ、このベタな脚本。応対するこっちの身にもなれよ」
バンプアップでタマキがヤケ酒を煽ってた時。
背後のスタッフルームの扉の後ろにカゲミツがいるのをいち早く察知したのはトキオだった。
しーっと指を当てながら、背後に目配せすると、タマキを誘うようなセリフを言い始めたのだった。
ヒカル自身はタマキよりカゲミツの擁護に回りたい気持ちもあったが、こうなったら乗らないわけにはいかない。
結局カゲミツに焦らせるためにひと芝居打つことに。キヨタカの悪乗りで、マッサージ指導までナオユキに指示するものだから、わざとらしすぎてバレるんじゃないかとヒヤヒヤした。
もちろんタマキは何も知らない。
「アラタは本気だったから気の毒だよな」
ヒカルの言葉に、
(まあ、そういうこと言ったらほかのやつも何処まで演技だかわからないが)
そう思いつつ、キヨタカは黙っている。
「ヒカルは俺のこと心配はしてなかったのか?」
「するわけないだろ。信用してるからな……でも」
「でも?」
「キヨタカの漏らす声には、ちょっと来た……な」
少し拗ねたように、上目遣いで見上げる。
「ああ、あれは音を拾ってるんだからわかりやすいようにサービスだ」
「あんな声、他のやつには聞かせるなよ」
ヤキモチを焼くヒカルも可愛いと思いながら、キヨタカは腕を伸ばす。
「わかった。肝に銘じておくよ」
そして、唇を尖らせた恋人の機嫌をとることに専念した。
[*前] | [次#]