それでいいのか6
ビルを出たところでカゲミツを拾うと、ヒカルはキヨタカの家に向かって走り出した。
「俺が運転する」
カゲミツがそう言うと
「やめとけ。事故るだけだ」
ヒカルに一蹴された。
足元にはカゲミツが飛び出した時に引き抜いたヘッドフォンが落ちている。
そして、プラグの抜けた盗聴器からは、タマキたちの会話が流れ続けていた。
『っ……そこ、……いいっ』
キヨタカのこらえるような声。
『上手くなってきたな。タマキ……』
『ホントですか』
褒められて嬉しそうなタマキの声などが、途切れ途切れ聞こえてくる。
「ヒカル〜。お前これ聞いて、何も思わないのか」
「思うところはあるけど……。…っ…くっ」
ヒカルが声を詰まらせる。
それを見て、カゲミツはそれ以上言うのを止める。
「俺、やっぱり、タマキが他の奴にするのもされるのも嫌だ」
「だったらそう言ってやりな」
そうこうしているうちに、キヨタカのマンションにたどり着く。
「あ、鍵は俺が開けてやるから」
エントランスを抜け、キヨタカの部屋に向かう。
「あ、ベッドルームは入って左な」
玄関を勢いよく開くと、カゲミツは一目散に、奥の部屋に飛び込んだ。
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