それでいいのか5
今日のミッションを終えて、みんなそれぞれ帰途につく。
「タマキ!」
カゲミツは書類を片付けているタマキに思い切って声をかけた。
「何?」
タマキが驚いたふうに顔を上げる。
カゲミツから声をかけられるとは思っていなかったようだ。
「今日さ……、俺んとここないか」
「……」
意外な誘いにタマキは驚いたようだった。しかし、困ったように言葉を続ける。
「いや、今日は先約があるから」
「そ、そうか」
「それに……ワゴンはヒカルもいるから3人泊まるのは無理だろ」
「そ、そうだな」
カゲミツはなんて言って、引きとめようか逡巡しているとタイミングを見計らったようにキヨタカが顔をだした。
「タマキ、終わったか?」
タマキはハッと振り返ると、返事をした。
「はい。今行きます」
それから、カゲミツの方にもう一度向き直る。
「……じゃあな」
2人が出て行ったあと、カゲミツはもっとうまく引き止める方法はなかったのかと、唇を噛んだ。
肩を落としたまま、ワゴンに帰り、いつものようにヒカルと晩飯を食べて銭湯に行った。
急ぐ用事もなく、明日はオフだと思うと、仕事をする気にもなれず、シートに寝転がる。
ヒカルはそんなカゲミツの様子を心配することもなく、なにやら盗聴する先を物色しているようだった。
「そろそろかな…」
ヒカルはそう言いながら、ヘッドフォンをカゲミツに差し出した。
「何?」
「いいから聞いてみろよ」
『タマキ……、どんなふうにしてくれるんだ』
『え……。それは、一生懸命します』
これは…、キヨタカとタマキの声じゃないか。
カゲミツは驚いてヒカルを見る。
「ほら、例のネクタイピン。まだまだ役に立つだろう?」
『気持ちよくしてくれるんだろうな』
『もちろん…です』
言葉が途切れて、衣擦れの音が入る。
『隊長……ここイイですか?』
『っ……。痛い』
『じゃあ、もうちょっとほぐしましょう』
「わーーーー」
カゲミツは焦ってヒカルを見る、
「な、な、な、…何してんだ。これ」
「何ってアレだろ」
「お、俺、キヨタカん家行ってくる」
そのまま飛び出していく。
「おい、カゲミツ! ……だから、そのまま車で行けばいいのに。学習能力のないやつだな」
ヒカルはエンジンを掛けるとカゲミツを追いかけた。
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