それでいいのか4
週末──。
カゲミツは落ち着かなかった。
今日はタマキがキヨタカのところに泊まりにくのだ。
朝に、キヨタカに
「タマキに手を出したらただじゃ置かねえからな」
と凄んだら、
「今回手を出してくれるのはタマキのような気がしたが? そうじゃなかったのかカゲミツ?」
と言われて、何も言えなくなった。
確かに、抱かせてくれと言ってるのはタマキのほうで。
みんな、それをわかった上で泊りに誘っているのだ。
しかし、他のメンバーはともかくキヨタカは何処まで手を出すかわかったものではない。
(慰めるとか言っても、キヨタカがタマキに抱かれるとは到底思えないからな)
タマキの貞操の危機が!!
そんなこと考えてぐるぐるしていると、ユウトが話しかけてきた。
「カゲミツ君。気分悪そうだけど大丈夫?」
「あ……ああ」
「みんな、お昼買いに行ったけど、カゲミツ君どうする?」
「俺は、食欲がないから……いいよ。ユウトこそ昼は?」
そう言いながら、顔を上げる。
「ナオユキが行ってくれるというから、お言葉に甘えたんだ。それにカゲミツ君のことが気になったから声をかけようと思ってたし」
タマキも一緒に出かけていない。
今なら、聞きたかったことが聞けるかもしれないとカゲミツは思った。
「なあ、ユウト」
「何?」
「お前、タマキとはどうなんだ? 寝泊りしてるってことはまさか……」
そういって言葉を濁す。最後まで口にする勇気はなかった。
「ああ、カゲミツ君。あの事気にしてるの? だったら全然平気だよ」
「平気って……」
「されるのが痛いとか……心配していたんでしょ? タマキ君は上手だから大丈夫!」
「ええっ!」
ということは、ユウトは……。
『もともとタマキのことが大好きな奴らばっかだ。どこで本気モードに入るかわかったもんじゃないぜ』
本気なら、どっちでもいいってことなんだろうか?
カゲミツがさらに考え込んでるうちにみんなが帰ってきた。
「さ、お昼にしよう」
テーブルを囲んでそれぞれの弁当やサンドイッチが開けられる。
「ほら。お前もちゃんと食え。体壊すぞ」
そう言って、おにぎりの包を差し出される。
ぶっきらぼうに。だけど、気遣わしげな声で。
顔を上げなくても誰かわかる。
タマキの声だ。
「サンキュ…」
ためらいながら顔を上げて礼を言うと、タマキは顔をふいっと逸した。
「いや……」
お互いろくな会話が出来ないままだ。
だけど、タマキが自分のことを心配してくれていることを感じて、カゲミツは嬉しくなった。
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