Project DC 19
(DC2パラレル)
その日は一旦みんな撤収することになった。
タマキは高熱とショック症状で、まだ面会できる状態ではないと言われた。
俺は、タマキの付き添いをしたいと申し出たが、キヨタカに拒否された。
「警備はしている。……お前もちゃんと休め」
そう言われると居るわけにもいかず。
翌朝もう一度、タマキの部屋に集まることになった。
翌朝──。
病室に入ると、タマキはこちらに顔を向け少し微笑んだ。
顔色は悪い。
「起きて大丈夫か?」
「うん、一晩寝たらだいぶ楽になった」
病室にはトキオ以外の全員が集まっている。
みんなが安心した表情になった。
「それから……今までのことも、思い出しました」
タマキはキヨタカのほうに向かってそう言う。
「ほんとに? タマキちゃん」
「ああ……。カナエのことも全部……」
そう言いながら、周りを見回したタマキと目が合う。
俺は思わず目を逸らしてしまった。
だめだ。心の中で自分を叱咤する。
これじゃ、俺がタマキに対して不信感を抱いてるって思われてしまう。
タマキはなんの迷いもなくこちらを見つめてきたのに。
不信感じゃない。……不安なんだ。
もしかしたら、記憶と一緒にあいつへの思いも蘇ったんじゃないか。
一昨日、抜け出した時にあいつとなにかあったんじゃないか。
そんなことばかりを考えてしまう。
タマキはそんな俺の様子を見て、言葉を詰まらせ俯いてしまう。
「じゃあ、話を聞かせてもらおうか」
キヨタカが口を開いた。
タマキはキヨタカを見上げ、意を決したように頷いた。
「はい……。でも最初に一言だけ言わせてもらっていいですか。カナエは……まだ俺たちを裏切ってはいません。……だから」
タマキが訴えるような目でキヨタカを見た。
キヨタカは、そんなタマキに勤めて冷静に言い放つ。
「心情的にタマキに心を寄せていようが、やってることはテロの実行犯だ。それに変わりない。……そして上層部の決定も変わらない」
「隊長!」
タマキが小さく叫ぶ。
みんなが息を呑んだ。
「あらあら。内情知っているのにそんな風に言っちゃっていいんですかー?」
間の抜けた声が、静まった病室に響いた。
みんな声のほうへ振り向く。
へらへらっとした表情でトキオが、手を振った。
なにかディスクのようなものを握っている。
「トキオ、何の事だ」
キヨタカが、押しころした声で問いかける。
「上層部の取引」
「余計なことは言うな。……今更知ったところで任務の妨げになるだけだ」
「フェアに行きましょう。……カゲミツだって恋はフェアにいきたいだろう?」
「取引ってなんだよ…キヨタカ」
俺が口を開く。
フェアってなんだよ。…心の中では毒づきながら。
どう見たって今でさえカナエのほうに、流れてるような気がするっていうのに、これ以上に何があるっていうんだ。
「後から知って後悔するよりいいと思いません?」
「…………」
黙って考え込んでいたキヨタカがため息を一つ洩らした。
「……わかった。話そう」
「よかったら俺が話しますよ。……仕入れたての極秘事項も交えながら」
「じゃあ、話してくれ」
トキオはディスクをセットしながら、話を始めた。
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