Project DC 18
(DC2パラレル)
俺たちが廃ビルに到着した時。
すでにナイツたちは立ち去った後だった。
地下に倒れているタマキを、見つけ走り寄ると急いで抱き起こした。
「タマキっ!タマキ…」
意識は失っているが、息はある。
ホッとして、気が緩みそうになる。
だけど、傍に落ちている、銀色のケースと腕に残る無数の注射針の痕。
そして、服こそ着せられているが服や地面にこびり付いた残滓を見て、再び血の気が失せる。
「何てこと……」
言葉を失くした俺にキヨタカの叱咤が飛ぶ。
「呆然としている暇はないぞ。…すぐ運ぶぞ」
「あ、ああ」
俺はタマキを抱えると、車に急いだ。
病院に着くとすぐさま救急処置が取られた。
「タマキの容態は?」
病室の前で待っている俺たちのところに、担当から説明を受けたキヨタカが戻ってきた。
「急性の薬物中毒といったところだそうだ」
「大丈夫なのか?」
「点滴で薄めながら体内に出すしかない……が、命に別状はない」
「そうか……よかった」
「ほんとに……」
みんなで安堵の息を吐く。
「ただ……」
「ただ?」
「タマキの傍に落ちていたデータが、軍の機密データだったので……。そのことで、上層部から疑いをかけられている」
あの時、タマキの傍にはこれ見よがしに捨てられたデータも落ちていた。
どうやら中身を確認した上で無用と判断したのだろう。
「タマキが抜き出して持ってたのか……」
ロザリオのデータがなくなっていた事への説明はこれで付いた。
しかし、どうしてそれを持ち出したのか。
疑問は残る。
だけど、ロザリオと一緒に持ち出した事を考えると……。
記憶を取り戻したタマキが、カナエに会いに行こうとしたことは容易に想像が付いた。
「この件は、タマキが意識を取り戻し次第、査問会にかけられることになりそうだ」
「査問会?」
「タマキに、スパイ容疑が掛けられている。……敵と内通していたのか。……もしくはしてなくても今回こうやって自白剤を打たれ、リンチを受けた事でなにか洩らしたか、……それともこうやって生かされてること自体が敵の策略か……」
スパイ容疑。
リンチ。
取り戻した記憶。
カナエ……。
さまざまなことが頭を渦巻く。
「俺は……タマキをこんな目にあわせるつもりで抱いたわけじゃない……」
だけど、結果はどうだ。
すべてが悪い方向へ転がっていく。
俺の呟きを横で聞いたトキオが、くしゃりと髪をかき回す。
それからそっと、部屋を出て行った。
『俺も…愛してる』
そう囁かれたのは、ほんの数時間前のことなのに──。
なんだか遠い昔のような気がした。
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