CROSS DELUSION
説明|文章|雑記|企画|頂物|独言|情報|通販|連鎖

第九幕 呼応
カゲミツはタマキの傍まで近づく。

体を拘束されたタマキは、顔だけカゲミツのほうに向けた。

「今の俺……どう思う?」

挑発するような眼差し。

「タマキは…タマキだ」

カゲミツはすこし逡巡しながら、ゆっくり答える。

「どういう意味だよ、それ」

タマキが、訝しむように、片眉をあげた。

「今も昔も変わらないという意味だ」

「嘘つけ……。お前の知ってる俺が、誰にでも足開いたり、男誘惑して男根咥

えたり、あまつさえ、それを噛み切ろうとかするのかよ?」

「それは………」

言いよどんでしまう。
覚悟はしていたつもりでも、事実を突きつけられると狼狽を隠せなかった



そんなタマキが、カゲミツをせせら笑う。

「クスリ漬けになりながら、昼夜問わずに犯られ続けた……」

「っ……」

「今では、すっかり男なしじゃいられない体になってしまった。……快楽なし

じゃいられない。それを得る為ならなんだってするし、善悪なんてどうでもい

い。すっかり堕ちてしまった」

「……嘘だ」

「何が嘘なんだよ。本人がそう言ってるんだ」

「そんなこと思ってない。タマキは……、まだ堕ちきってない。……だから苦

しんでいるんだ」

「なにを……」

「だから……。防弾チョッキも着ずに、俺たちの前に身を晒したんだろ」

「違う」

「いっそ死んでしまえたらと思いながら……。でも、自分からは死ねないから。必死で助けを求めて……」

「違う!」

「根本的には変わってない」

「そうか? ……仮にそうだとして、お前はそんな俺を救ってくれるのか?」

「もちろん」

「どうやって?」

「もう二度と、あいつらには渡さない。俺が守る」

「お前は……。今の俺を受け容れられるのか?」

「ああ」

「こんな、汚れた体の俺を……。なあ……。きっとお前、びっくりすると思う

ぜ」

「そんなことない」

「……ちょっとでも俺の体に触れてみろよ。それだけで火がつく。体が疼いて

どうしようもなくなって、体を開いてしまう。あそこは反応してしまうし、後

ろは男を欲しがってヒクヒクと蠢きだす……」

タマキは自嘲気味に言う。

「そんな淫乱な体の俺を受け容れられるっていうのか?」

「受け入れられるよ」

「だったら、やってみろよ。こんな俺でも抱けるか」

「タマキ……」

カゲミツはそっと、タマキの拘束具をはずし始めた。

腕の拘束を解き、すべて脱がせていく。

「俺はずっとお前が好きだったし、今もこの気持ちは変わらない。…お前が欲しい」







「いっ……っ」

タマキが苦しそうに息を継ぐ。傷口に響くことは承知だ。

だけど、手加減はしなかった。

少しでも躊躇したり、怯んだ様子を見せたら、タマキはカゲミツを信じないだろう。

「カ、カゲミツ……」

「ん?」

「こんな俺……でも……」

「好きだ……」

カゲミツは、思い切りタマキを引き寄せる。

「あ…っ……ん…」

「好きだ……好きだ、好きだ、好きだ…タマキ……」

「……っ……」

カゲミツの囁き声と、熱い吐息と。

タマキのすすり泣く声が……、静かに……響いた。



[*前] | [次#]

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -