想いを伝えて1
(キヨタカグッドEND後 キヨ×ヒカ×タマ+カゲミツ)
カゲミツがミーティングルームに入っていった時にはすでにキヨタカが来ていて、タマキと打ち合わせを始めていた。
それを横目で見ながら、ソファーに腰を掛ける。
(?)
カゲミツは、ミーティングルームの不穏な空気を感じながら、まじまじとタマキを眺めた。
(どういうことだ?)
キャンデーをなめる動きが思わず止まる。
この場合の不穏な空気というのはカゲミツにとってであって、周りはあくまでも和気あいあいとしている。
和気あいあいとしているが何かが違うのだ。
仕事の説明をするキヨタカとその説明を真剣に聞くタマキ。
だが、いつものようであって、いつものようではない。
まず、第一に立ち位置が違う。
なんで、あんなにぴったり寄り添うように立つんだ。
真剣な顔ながらも、高揚した頬は何だ。
あのまとわり付くような甘い空気は何だ!?
「おい・・・」
隣で雑誌を読むヒカルに声を掛ける。
「俺が入院している間に何があったんだよ」
ヒカルは顔を上げずに雑誌を読み続ける。
「何って言われても・・・。俺もあまり言いたくない」
「まさか・・・」
「・・・」
意地でも顔を上げないヒカルの態度が雄弁に語っていた。
「タマキが、キヨタカと・・・」
「・・・」
「嘘だろ。おい・・・」
「・・・」
昔見た夢が蘇る。
自分が躊躇しているうちに、他の奴に、タマキをかっさらわれる夢。
あの悪夢が、現実になって、俺の前に突きつけられる。
ギリ…っとかみ締めた口の中で、血の味が広がった。
* * * *
「タマキ・・・。」
ミーティングのあとに、タマキに声をかける。
「ん? どうした、カゲミツ。まだ復帰したばかりだから無理するなよ」
優しく微笑まれて、胸がうずく。
なんだか切ない。
自分の恋が報われないと…半ば確定していても、やはり彼に微笑まれると嬉しい。
タマキに嫌われるのが怖くて、気持ちを抑えて。
ただの友人でいようと思って。
なのに、その結果キヨタカに取られるなんて。
自分の臆病さが恨めしい。
こんなことになるならもっと早く気持ちを伝えていればよかった。
早く伝えたからと言って、自分の恋が実ってたかどうかはわからない。
だけど、伝えたい。
気持ちが抑えられない。
「話があるんだ」
手を引っ張って、廊下に出る。
「ど、どうしたんだよ」
タマキは驚きながらも、俺について来た。
人気のないところまできて、俺はタマキを振り返った。
手は握ったままだ。
射撃場のほうは今日は誰もいなかった。
廊下もひっそりと静まり返っている。
「タマキ…」
握った手が汗ばむ。
「ん?」
「キヨタカと付き合ってるって本当か?」
タマキは驚いたように顔を見上げた。
それから、俺の顔を見て、冗談や酔狂で聞いてるのではないとわかったのだろう。
真剣な顔をして、答えた。
「本当だ」
「キヨタカが好き?」
「ああ」
「・・・そうか」
はっきり言われて、諦めがつく・・・わけではなかった。
言われて余計、自分の気持ちを自覚した。
それでも好きだと。
「俺も、お前が好きだ」
「…!」
タマキは少し驚いた顔をしていた。俺が恋愛感情で好きだとは思ってなかったのだろう。
「ずっと、好きだった。・・・今でも好きだ」
「カゲミツ…」
「お前がキヨタカが好きでも、この気持ちは変わらない」
「・・・ありがとう。ごめん。お前の気持ちに応えられなくて」
タマキは、俯きながら俺の手を握り返してきた。
「だけど、仲間として、親友として、カゲミツのことは・・・」
少し躊躇ってからタマキは続けた。
「大事に思ってるから」
タマキが出来る精一杯の気持ちの表れだと思った。
親友として好き・・・と言うことも出来ただろうに、気持ちが重すぎて簡単に使えないところが、タマキらしいと思った。
俺も手を握り返して…それから、お互いそっと手を離す。
「これからもよろしくな、リーダー」
「おう」
いつもの覇気がない、タマキの返事はなんだか、切なかった。
2010/03/13
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