第四幕 作戦
「単独でスラムに乗り込んで敵との接触を…」
「却下」
「次に敵に誘われた時に、誘いに乗ったふりして潜入…」
「却下」
「スラムにタマキの捜査網を張る」
「却下」
「スラッシュを移送する偽情報を流して、おとり…」
「却下」
これで何度目の提案だろう。
にべもなくキヨタカに却下され続けて、さすがに手がなくなってきた。
「親父の替え玉になって、殺害に来たタマキ達を返り討ち…」
「…無理がある。それも却下」
「やっぱり」
「…と言いたいところだが、それは少しは考えてもいい。イチジョウ侯爵がまた狙われることになったら、その身をみすみす敵にさらすわけにはいかないからな。おとりの必要性はある」
「やった…!」
「…しかし、その役をお前に振るのは、心配が…」
「う……」
「大丈夫。俺たちが守るから。…そのへんは、もうすこし実行部隊に任せてくれていいよ」
トキオも口を挟む。
「しかし、アマネの今後の狙いはどこになるんだろうな。オミが華族を標的にしていた時とは明らかに様子が違うし」
トキオの問いかけにキヨタカが答える。
「…軍部への憎悪、ひいてはそれを統括する宮への憎悪になり、この国全体へと向かってるんだろう」
「そうなったら無差別と変わらないな」
「確かに…。だが宮への危険が高まってるのは事実だし、その側近の華族ももちろん警戒が必要だ」
「イチジョウ侯爵が狙われる可能性も、高いって事だな」
「これは、本当に、カゲミツがおとりになる日も近いかもな…」
──そんな話をしていた数日後。
本当にナイツオブラウンドから、殺人予告状が来たのだった。
イチジョウ侯爵に対して。
2010/07/20
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