第二幕 潜入
キヨタカから指示を受け、実行部隊は特定されたビルに潜入することになった。
新しく入った新人2名は、アラタとトキオと組んでそれぞれ入っていく。
ユウトとナオユキは今まで通りだ。
一方カゲミツ、ヒカル、オミ達は、後方支援でビルの様子を伺った。
「どう動くと思う?」
カゲミツがヒカルに訊ねる。
「今までのパターンだと、トラップ満載で切り抜けたところを待ち伏せ。後方からはライフルで援護ってとこかな」
「そんなところだね」
オミも同意する。
「だよな…。カナエは、いるかな」
「ナイツに戻ってるならいるだろうな」
「タマキと一緒なのかな」
「…そのことは今は考えるな。すべてはやつらを捕まえてからだ」
「ああ…」
気持ちを切り替えて、モニターに向かう。
ヒカルが内部の様子を窺ってる間、カゲミツは後方に敵がいないから索敵を始めた。
暗視装置から怪しい人物がいないか探す。
「……なっ」
3つほど離れた、ビルの屋上を拡大したカゲミツは、そこに意外な人物を見た。
ヒカルも息を飲む。
「タマキ!?」
そこにいるのは、カナエとタマキ……。それから銀髪のレイ。
手に持っている四角い装置は…。
「罠だ!! 全員退避!」
ヒカルが叫ぶ。
次の瞬間。ビルは大きな爆音に包まれた。
「くそっ! あんなところからリモコンで爆破とは……っておい、カゲミツ!」
カゲミツは、次の瞬間にはワゴンを飛び出していた。
そして、ビルに向かって走り出す。
「ヒュー! 危機一髪! 助かったよヒカル」
「ワイヤーで飛び出したのは正解だったね」
イアモニからトキオとアラタの声が聞こえてきた。
「みんな無事か!?」
ヒカルが応答する。
「お陰様で」
ナオユキも応える。
「大変だ。カゲミツが…」
「カゲミツが?」
「敵を追って、ビルに向かった…。タマキも一緒だ」
「場所は?」
ヒカルは急いで場所を説明する。
「すぐに追いかける!」
チャチャひとついれないトキオの応答に、かれの余裕のなさを感じた。
「頼む」
ヒカルがビルの様子を伺おうと、再び画面に目を向けた時には…。
カメラは壊され、乱れた画像が映るだけだった──。
* * *
そのころ、すでに屋上に到着したカゲミツは、息も絶え絶えになりながら、屋上のドアを開けた…。
「タ、タマキ…!」
無事だったのか……。
そう言いたいが、声が出ない。
だが、こちらを向く彼に違和感を覚える。
冷ややかな、小馬鹿にするような眼差し。
「へえ…。けっこう優秀じゃん。カゲミツ」
「た、タマキ?」
「俺を追いかけて、ここまで全力疾走してきてくれたのか?」
「……」
息は切れ切れで体は熱いのに、冷や汗が流れ落ちる。
「そんなに俺と居たいなら、おまえもこっちに来ないか?」
タマキが蠱惑的な微笑みをむける。
「こっち…」
頭が上手く回らない。
こっちってどっちだ?
「おい、何馬鹿なこと言ってるのさ」
横から、レイが睨む。
「そうだよ、そんな指示は受けてないんだから…」
カナエがそう言いながらすっと移動したかと思うと、首筋に手刀を打ち込まれる。
そのまま、カゲミツは卒倒した。
トキオ達が駆け付けた時には、他の3人の姿は消えていた。
カゲミツ一人が残された状態だった。
2010/07/18
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