第一幕 ナイツオブラウンド再び
「みんな、昨日の爆破事件の事は知ってるかと思うが…」
バンプアップの地下のミーティングルームにて。
J部隊の面々が、真ん中のテーブルを囲んで椅子に腰を掛け、プロジェクターから投影される都内のビル爆破の悲惨な状態を苦々しい顔で眺めていた。
「あのビル爆破の犯人が、わかったんですか?」
ナオユキが尋ねる。精悍な顔つきと体格は昔日の美少年の面影はすっかり身を潜め、今では一人前の男になっていた。
「ナイツオブラウンドの仕業だと判明した」
「なっ」
みんなに驚愕の色が浮かぶ。
ナイツオブラウンド──。
それは数年前、この帝都を震撼させたテロ組織の名前だ。
警視総監の殺人未遂事件で、多数の仲間を失った彼らは海外に逃亡した。
J部隊の一員であるタマキと、それから元仲間のカナエを連れたまま──。
こちらの必死の捜索にも関わらず、彼らの居場所はようとして掴めなかった。
それが、再び姿を現したとは──。
「模倣犯による犯行ではないんですか?」
ナオユキの隣に座っていたユウトが尋ねる。
「現場に残されていたコマドリのカードが、今までのものと同一のものと判断された」
「俺抜きでナイツオブラウンドを名乗るなんて、いい度胸してるじゃない」
ソファーの真ん中に腰掛けていたオミが呆れた口調で言う。
オミはナイツオブラウンドの元リーダーだった男だ。
フジナミ横領事件で、無実の罪で死に追いやられたフジナミ候爵の長男で、華族へ復讐するためにアマネと手を組みナイツを組織した。
だがアマネの裏切りで、乳兄弟のヒサヤを殺された為J部隊に組し、現在にいたる。
あの時の事件で、ナイツたちは、カイトとブルを失った。スラッシュは現在投獄中だ。入院中だったダヴだけは奪還に成功したが、ヒサヤを殺されたオミと決裂して、まさか組織として存続してるとは思いもよらなかった。
「今回の我々の任務は、彼らのアジトを特定し、それからタマキの安否を確認することだ」
「タマキちゃんは…生きてるんだろうか」
アラタが呟く。
すっかり大きくなって、今ではオミと並ぶくらいの長身だが、タマキを案じる姿は心細い子供のような面持ちだ。
「ばっ、当たり前だろ! タマキがそう簡単に殺されてたまるかよ」
オミの右隣に座っていたカゲミツが、叫んだ。
「まだ諦めてなかったのか…」
オミの左隣のヒカルがカゲミツに聞こえないくらいの声で呟き、隣のオミはそれを聞いて眉をひそめた。
タマキがいなくなって荒れていたカゲミツを見守り続けて数年──。
ようやく落ち着いてきたと思っていたのに、こんな日が来るとは。
「大丈夫だよ。お兄さんが必ず救出するから」
トキオがウインクしながら答える。
「よろしく頼む」
キヨタカがみんなに言った。
2010/07/17
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