Project DC 0
(DC2パラレル)
「俺のメリットは?」
茶色い髪と瞳をもつ男が、抑揚のない声で訊ねる。
「もし、このプロジェクトが成功したら、君たち2人を自由にする。もう、追跡されることもなく、2人で生きていける」
長身で黒髪の男が答えた。
「はっ……。うまくいくと思ってるんですか? 俺が戻ったところで、制裁を受けて殺されるがオチですよ。…それに、もしうまくナイツに戻れたところで、俺が彼らを裏切れるとお思いですか?」
「それは……」
「もし、先に俺たち2人がナイツに捕まって、逆の立場に彼が置かれたとして、あなたたちを裏切ると思いますか?」
「無茶な条件なのはわかっている……。でも、それが上の意向だ」
「制裁受けて死ぬなら死んで構わない。裏切ったら裏切ったで構わない。その時は殺すだけだ。…ダメ元の計画って感じですよね」
「まったくだ。……ここから出た後、ナイツに戻らなくてもいいから……。出来ればそのまま逃げて欲しいと思っている」
「……でも、そうすると彼は手に入らない」
「タマキは……。お前にとっての餌だから」
「隊長……。あ、今は俺の上司でもなんでもないんでしたっけ。…キヨタカさん。タマキ君の容態は?」
「頭の傷はそれほど酷くない。ただ、意識がまだ……」
黒髪の男…キヨタカが難しい表情で告げた。
「くっ……」
「カナエ……。嘘でもいいから条件を飲んだ振りをしてほしい。…ここで、お前を殺すのは忍びない」
「………」
カナエと呼ばれた茶髪の男は、しばらく苦渋に満ちた表情で考え……。それから顔をあげて答えた。
「わかりました。……その条件。飲みます」
「では、具体的な指示を……」
「実行は、明朝の3時。……あの海岸にお前を戻す。……お前はこちらの追跡を逃げおおせた振りをして、彼らと接触してくれ」
「……無事、生きていたら。……またテロ活動の時に会うことになると思います」
「生きていることを祈ってるよ」
「ごまかしの効かない相手ですから、本気で狙いますよ」
「こちらもそのつもりで対応する」
「……きっと、カゲミツ君あたりが、真っ先に気づくでしょうね」
「やつは……優秀だからな」
「……タマキ君を…頼みます」
「わかった…」
「もし俺が戻らない間に、彼が誰かを愛したら…」
「……」
「この交渉は…決裂です」
「そう…だな」
「でも、彼の幸せをちゃんと祈りますから…」
「カナエ…」
そのまま、カナエは一言も話さず、2人でまんじりともせずに実行時間を迎えた。
キヨタカは…密かに、彼らの恋が再び成就することを祈った──。
2010/05/08
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