Project DC 10
(DC2パラレル)
バンプアップに上がるとタマキが、俺の帰りを待ってくれていた。
「カゲミツ…傷の具合はどうだ?」
いたわるように声を掛けてくれる。
「大丈夫。ただの掠り傷だから」
俺は努めて明るく答える。
「どうする? 部屋に来る?」
「もちろん! …トキオは?」
「まだ帰ってない。最近いつもこんな感じなんだ。他の仕事も忙しいのかな」
タマキの事で、いろいろ調べているのかもしれない。
もしくは、今日はA部隊も合同だったから、そっちの陣中見舞いかも。
どっちにしろ、トキオのいない方が動きやすい。
見張られていたら、聞きにくいこともあるし──。
「そっか。じゃ、ちょっくらお邪魔しますか」
「ああ」
タマキは立ち上がると、俺に肩を貸そうとした。
俺は、ありがたくタマキの肩に手を回した。
* * *
「ちょっと、待っていて」
タマキはリビングのソファーを勧めると、コーヒーを淹れに立った。
リビングダイニングは共同。
それに、各自に一部屋ずつあるみたいだ。
「けっこう広いな」
「ああ、二人だともったいなくらいだろ」
「俺…ソファーで寝泊まりさせてもらいたいくらいだ」
ぼそりとつぶやく。
「…え?」
「いや、なんでもない」
ダメだ。あまり不審な事言わないようにしないと。
「タマキの部屋も見ていい?」
「いいよ」
そっちのほうだからと指で指示された方の部屋へ入る。
サイドテーブルの上を見ると、ロザリオが置いてあるのが目に入った。
これが、きっとカナエのロザリオだ。
タマキがコーヒーをセットしているうちに調べてしまおう。
見た目はなんの変哲もないロザリオだった。
真ん中にメダイ(メダル)の付いた、木製数珠のロザリオ。
(メダイを調べてみるか…)
胸元の携帯キットから、小さなドライバーを取り出す。
メダイのサイドを調べると、わずかに継ぎ目があることが分かった。
(ここだ…)
傷がつかないようにそっと、こじ開ける。
(!)
案の定中は空洞になっていた。
だけど──。
あるはずのマイクロSDはなかった。
(くそっ。…すでに持ち去られてるのか?)
そのあと、クロスの部分や数珠も一つずつ調べてはみたが。
何かが隠された形跡はなかった。
ロザリオは…空振りに終わってしまった。
2010/04/15
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