Project DC 8
(DC2パラレル)
──次の日。
ミーティングルームに早めに入った俺は、タマキに声を掛けることにした。
タマキは、アラタと楽しそうに喋っている。
「タマキ…。ちょっといいか?」
タマキが顔を見上げる。
「ん? どうしたカゲミツ」
「あのさ…。今夜、タマキん家遊びに行っていいか?」
「いいけど? 遊びに行くってほどでもないけど? すぐ上だし」
「いや、それでもいいんだ。どんなところなのか見てみたいし。トキオの事も気になるし…」
「トキオがどうかしたか?」
「いや、その…部屋とか別かなとか…」
「別に決まってるだろ」
タマキが呆れたように言う。
「鍵は掛かるのかとか…」
「鍵は掛かるけど…掛けてないな」
「そ、そうなのか!」
「…そんなに驚くことか?」
「あー、いや。別に。…んじゃ、よろしくな」
「カゲミツ君、泊まりじゃないんだ?」
アラタが横から興味深げに聞いてくる。
「ばっ…。泊まるわけないだろ」
「なーんだ。そうなの」
そういや、アラタの態度がおとなしいな。いつもなら『えー、僕も』とか言いながら絡んできそうなものなのに。
「お前は気にならないのか?」
思わず訊ねる。
あ、やべ…。そんな事言ったらヤブヘビかも。
ところが、アラタは意味シンな笑いを浮かべながら言った。
「だって、僕はもうとっくにお泊りしちゃったもの」
「なんだと〜!!」
俺は、思わず声を荒げる。
「だってね、こないだクレイモアで、砂埃だらけになってしまったでしょ。だから、タマキちゃんとシャワー浴びてそのまま、泊めてもらったんだよ」
「おっ、お前…まさか、また変なことしてねーだろうな」
俺が、アラタに詰め寄ろうとすると、タマキが真っ赤な顔をしてそれを遮った。
「ちょっと、待て。カゲミツ…。またって、なんでお前がそういう事があったって知ってるんだ!」
「そ、それは…。以前、たまたまタマキの家に行ったら、そういうところに出くわして…」
しどろもどろに答える。
「たまたま…ね」
アラタが突っ込む。
「いや、とにかく無事だったのか?」
「無事もなにも、変なことされたわけじゃないから…」
「ホントか?」
「ホントだよ」
「…なら、いいんだが。アラタ、変なマネするなよ!」
「…しないよ…。タマキちゃんが嫌がる事は、…絶対しないよ」
珍しく神妙なアラタに面食らう。
タマキの表情も、なんだか辛そうだ。
気まずい雰囲気を感じながら、俺はソファーに戻った。
もっと、さりげなく遊びに行くだけの話題を振ればよかったのに。
なにぐだぐだにしてんだ、俺。
後悔で、思わず頭を抱え込む。
「バカ…」
隣に座っているヒカルに、トドメの一言を食らってさらに落ち込んだ。
あんまり落ち込んでいて、タマキの記憶がどこまで戻ってるのか考える余裕さえなかった。
2010/04/12
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