Project DC 7
(DC2パラレル)
「ヒカル?」
キヨタカがヒカルの表情を伺うように見る。
「…それでいいのかよ」
俯きながらヒカルが、呟いた。
「ん?」
「何でもかんでも許してしまって、何もなかったようにタマキを受け入れて。それで本当にいいのかよ!」
今まで抑えていた気持ちを、吐き出すように叫ぶと、キヨタカを見上げた。
無言のまま、暫し見つめ合う二人。
「…でも、お前もこのまま放っておくつもりはないだろう?」
「……」
「何もなかったように付き合う必要はないさ。ただ、後悔するような事はしてくれるな」
「後悔なんて…あいつをJ部隊に復帰させた時点で、とっくにしてるよ。…もっと断固反対すればよかった。そしたらキヨタカが、こんなリスクを背負うこともなかった。あいつ自身、こんな辛い状況に置かれることもなかった」
ヒカルが膝の上でこぶしを握り締める。
「…そうだな」
「だったら!」
「だけど、そうすると俺が後悔する羽目に陥りそうでな…。俺の目の届かないところで、あいつに何かあったらと思うと。こうせずにはいられなかったんだ。…すまない、ヒカル」
「謝るな、馬鹿野郎」
ヒカルの気持ちが痛いほど伝わってきた。こいつはキヨタカが大好きだけど、タマキの事も好きなんだ。
「だけど、こういう状況であるとわかった今、たしかに放っておくわけにはいかないぜ」
今、あいつの状況が判って、そして守れる存在は俺たちしかいない。
「判ってるよ…」
ヒカルが、ため息をつく。
「で、これからどうする?」
ヒカルが俺たちに向かって尋ねた。
「まずは、タマキの身辺に気を配ること。そして、タマキの機密の所有を探ること」とキヨタカ。
「それから、カナエからの接触に気を付けること」と俺。
「タマキの記憶の状態に配ること。なにか戻りそうな兆しが現れたら気を付ける。目を離さない」
キヨタカもさらに続ける。
「もし、記憶が戻ったら…あいつは、どうするんだろう」
俺は、不安を打ち消したくて思わずそんな問いを投げかけた。
「カナエの元に行こうとするんじゃね?」
ヒカルが、それをあっけなく言ってのける。
「それはさせない」と、キヨタカ。
「…キヨタカ。それでタマキは幸せなんだろうか?」
ヒカルが問う。
「それでも、二度とあんな目には合わせたくない。ここに留めるしかないのさ」
「……」
それがタマキの本当の幸せとは、俺には思えない。
だが、カナエとの愛の成就させるのは…すなわち死の追跡への道だ。
俺だって、二度もタマキを失うような目には合いたくない。
これは俺たちのエゴでしかないのか…。
俺は唇を噛みしめた。
2010/04/11
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