Project DC 6
(DC2パラレル)
「あと、タマキの記憶の事なんだけど…」
ヒカルが別のデータを開きながら言った。
そこには、病院のカルテや、症状についての報告書などが表示されている。
「どうやら、記憶がないのは事故直後からのようだ。後から消されたわけではないらしい。ただ…」
ヒカルが口ごもった。
「ただ?」
「記憶を取り戻させようと、躍起になって、いろいろ試したみたいだ」
「いろいろ?」
「薬とか、装置とか…」
「なっ…!」
なんてことしやがるんだ、上層部! 赦さねー。
「それでか…。俺が病院に行ったときに感じた違和感は。あの時はてっきり記憶を消すために動いているのかと思ったが、真相は逆だったみたいだな」
キヨタカが納得したように言う。
「そういう事をされた為に、余計に防衛本能が働いたというのか。タマキの記憶が戻らないのは…そのへんに起因しているのかもしれない」
「カナエを守るために?」
「たぶんな……」
「……」
記憶を失くしてなお、守りたいという気持ちが働いているのか…。
タマキの、カナエへの愛情を思い知らされる。
「そもそも、キヨタカはなんでタマキの記憶を消されたと思ったんだ?」
俺は、これ以上カナエの事を考えたくなくて話題を変えた。
「反逆的な態度を取る奴は、記憶を消され従順な組織の犬に成り下がる…。って公安の常套手段だろ。利用価値のある者に限るがな」
「しらねーよ。そんな手段」と、俺。
「というか、むしろ『裏切り者は抹殺』が常套手段だと思ってたぜ、俺は」と、ヒカルも言う。
「二度目はない…」
キヨタカの言葉が重く響いた。
「……」
「……」
「タマキが、今度裏切るようなマネをしたら、その時は俺も庇いきれない。…だからこそ、タマキを守りたい」
「わかった」
俺は頷いた。
「……」
ヒカルは返事をしなかった。
2010/04/09
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