この感情の名前2
(DC1第6話 ナオユキ→ユウト)
こんな仕事をしていると、「死」は常に隣り合わせだと覚悟していた。
だからあの時も、「死ぬ」と思った瞬間。
その時が来た──という感じがしただけだった。
死ぬことは怖くない。
死を恐れてこの仕事には就けない。
自分が死ぬことには何も思わない俺が…。
あいつが「死ぬ」と思った瞬間にはこんなに恐怖するなんて。
思ってもみなかった。
血まみれのあいつを抱きながら、叫び続けるしか出来なかった。
恐怖のあまり発狂しそうになった。
そんな状態になって、初めてあいつの存在がいかに大きくなってたかを思い知った。
物静かな仲間だと思ってた。
穏やかだけど、芯が強くて、忍耐力があって。
温和勤勉なんて四字熟語が似合うようなやつだと思った。
と思ったら、けっこう突拍子もないことしたり、はしゃいだり、天然だったりした。
いろんなことでつるんだり、励んだり、いい関係だと思ってた。
俺が無茶しすぎると、たしなめたり。
落ち込んでると励ましてくれたり。
フォローの入れ方が絶妙だった。
相棒として、これほど頼りになる奴はいないと思った。
一緒に居るのが自然で、当たり前になり過ぎて。
どういう存在かというのを、いちいち考えることなかった。
というか、わざわざ考えたくなかったのかもしれない。
余計な事考えるのは邪道な気がして。
だけど、今は考えずにはいられない。
今、あいつなしの人生なんて考えられない。
二度とあんな恐怖は味わいたくない。
だって俺はあいつの事を…。
2010/04/07
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