CROSS DELUSION
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MEMO
小ネタ9(クリスマスイブ)後編
2010/12/25



タマキが風呂から上がってきたので、交代に自分も入る。

風呂から上がると、タマキはカゲミツのベッドに寝転がっていた。

「ホワイトクリスマスにはならないみたいだ」

タマキが、窓の外を眺めながら言う。

「うん、でも寒波のせいですごく冷え込んでそれらしい雰囲気ではあるよな」

曇った窓ガラスを眺めながらカゲミツが答える。

部屋はヒーターのお陰で暖かい。

風呂上りなこともあって、体はまだぽかぽかしている。

「タマキも湯冷めしないように。布団かぶれよ」

いくら部屋が暖かくても、パジャマのままの薄着ではすぐに湯冷めしてしまう。

「うん。……カゲミツも来いよ」

タマキが布団をかぶりながら、カゲミツが入れるように端を持ち上げた。

乞われるままに、布団に潜り込む。

「暖かいな」

「うん……」

「こんな寒い日に、隣に誰かがいて、その人の温かみを感じることが出来るってのは、ほんと幸せだよな」

「その誰かが好きな奴ならなおさらだ……。俺、タマキとだからこそこんなに幸せなんだと思う」

「それはもちろん俺だって! カゲミツだから…幸せなんだよ」

誤解されたのではないかと、慌てたタマキが力説する。これは決してカナエがいなくなった隙間を埋める為の行為ではないと、カゲミツにわかって欲しかった。

「なあ、カゲミツ」

「何……」

「俺、クリスマスには何が欲しいって聞かれてさ……」

「うん」

「お前って答えたじゃん」

「う、うん」

カゲミツ神妙な面持ちで頷く。

タマキが欲しいものなら……。なんだってやる。

ずっとそう思ってた。

それこそ、命だって魂だって。

命を掛けてタマキを守り、そして愛していこうと決めた自分ではないか。

いまさら体の一つや二つ。躊躇することでもない。

そう思うとなんだか吹っ切れて、なるようになれという気がしてきた。

「それって、こんなふうにカゲミツの時間を独占して、自分とだけ過ごしたいという意味もあるんだけど…」

「うん?」

「……それだけじゃなくて……」

タマキがどう言おうか考えながら言葉を継ぐ。

「今日だけのことじゃなく、これからもずっと……一緒にいたいんだ。出来たら一生。そういう意味の全部なんだ」

「タマ……キ」

想像以上に、話は大きくて。

目先の事柄にとらわれていた自分を、とても小さく感じた。

ただ、一緒に過ごせることが嬉しくて。

それだけで望外のことのように感じていた。

この先をどこまで望んでいいか、なんて及ばなかった。

いや本当は、プロポーズを考えたこともあったが、タマキの心の大半をまだカナエが占める今、ほんの数ヶ月その上に想いを積み重ねたところで、到底敵うものではないと、諦めていたところもあった。

それを、タマキのほうからも望んでくれるなんて。

こんな幸せってあるだろうか。

驚いた表情のまま、固まってしまったカゲミツの頬に、タマキがそっと触れてくる。
「そういう意味での、……クリスマスプレゼントだけど。くれるか? カゲミツの一生を」

必死で目を凝らしながら頷く。視界が滲む。

「俺との永遠を約束してくれる?」

「ああ……約束す……」

涙で声を詰まらせてしまった。

「約束するよ」

そう答えながら微笑もうとしたら、こらえきれない涙が溢れて、鼻梁と目じりを伝っていった。

タマキがそっとキスしながら、涙を吸い取る。

それから、頬に唇にキスを落としていく。

「泣くなよ……」

啄ばんだ唇を離しながら、タマキが言うと、

「ごめ……。なんか幸せすぎて胸がいっぱいで……。泣いちまった」

カゲミツが少し照れながら答えた。

それから、真面目な顔で続ける。

「俺の全てを、お前にやる」

そう言いながら、今度は自分からキスをした。

タマキの体を強く抱きしめると、タマキも強く抱き返してくれる。

今度は啄ばむだけのキスだけでは飽き足らず、深い口付けに変わっていった。

「ん……っ…」

「あっ……ふっ……」

互いの吐息が甘く絡み合っていく。

そして、次第に熱く熱を帯びたものになっていく。

次の行動に出たい衝動に駆られながらも、必死に押さえるとカゲミツは少し情けない声で囁いた。

「で……さ……。俺の全てをやるってことは……俺が抱かれることになるのか?」

そう問われて、一瞬驚いた顔をしたタマキ。

だけど、カゲミツの言わんとしている事を理解して、ニヤリと微笑んだ。

「お望みとあらば……いくらでも」

妖艶な微笑みを浮かべたタマキに魅入られたように固まったカゲミツ。

やがて観念したように力を抜くと、目を閉じて言った。

「もう……、どっちでもいい」





















翌週──。

興味津々に事の仔細を訊いてきたメンバーに対して、カゲミツはにっこりと微笑むと、一言

「教えねえ」

と言い放ち、タマキも

「ご想像にまかせるよ」

とさわやかにかわした。




そんなカゲミツを「一皮剥けた」とか「タチ度が増した」とか、密かに議論が交わされることになるのだが。


それはまた、別のお話。



(FIN.)

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