MEMO
小ネタ4(気の早い新年ネタ)
2010/12/16
「ニューイヤーのカウントダウン?」
「うん、カゲミツも行かないか?」
タマキの誘いにもかかわらず、「カゲミツも」の「も」に引っかかってしまう心の狭い自分に嫌気がさすカゲミツ。
タマキと行きたいのは山々だ。
だけど、大勢の中の一人というのが引っかかって。
つい、思ってもいないことを言ってしまう。
「あー。ごめん。まだ諜報の仕事が残ってっから」
意地を張ってるのは自覚している。
やせ我慢であることも。
「そうか……。残念だな」
と、寂しそうなそぶりを見せたタマキに、すぐにでも前言撤回したくなる。
だけど、コロコロ意見を変える自分もやっぱり嫌で。
カゲミツは、呼び止めたいのを必死で堪えながら出て行くタマキを見送った。
「本当にいいのか?」
ワゴンに戻って、作業をしているカゲミツにヒカルが話しかけてくる。
二人とも、今年の大晦日はワゴンで迎えることになりそうだ。
もっとも、ヒカルは仕事が終わり次第キヨタカと帰る予定だが。
キヨタカは自分の仕事をしながら、ミーティングルームでこっちの作業が終わるのを待っている。
「別に。いいよ……。仕事だし」
「へー。そう?……」
暫く無言で、作業を続ける。
今頃タマキは、他のメンバーと一緒に楽しんでいるんだろうな。
そんなことを考えると、作業に身が入らなくなるカゲミツだった。
そんなカゲミツを見ながら、
「そういやさ……」
ヒカルがまた話しかけてきた。
「今度の、都心でするカウントダウンのイベントって『東京でタイムズスクエアばりのカウントダウンを』ってのが売りらしいぞ」
「ふーん?」
「……タイムズスクエアのカウントダウンっていったら『あれ』だろ?」
「あれ……ねぇ……」
気のない返事をしたカゲミツ。
だが、次の瞬間慌てたように立ち上がる。
カシャン…と、手元のディスクが落ちて散らばった。
「俺……。やっぱり行ってくる!」
そう言うなり、ジャケットを掴むと急いでワゴンを飛び出していった。
ヒカルはそんなカゲミツを見送りながら、やれやれという表情で肩をすくめた。
「……ここまで世話を焼いてやる必要はないんだけどなあ…。お仕置きされる身にもなってくれよ……。でも、ま。いっか。」
散らばったディスクを拾いながら、カゲミツのPCのモニタをふと見る。
それから、ぷっと吹き出した。
「ここまで気にしてるなら、さっさと行けよ…」
画面には、タマキのピンに仕掛けたGPS追跡画面が表示されていた。
最寄の地下鉄まで、走りつめて。
ドアに挟まれそうになりながら、地下鉄に飛び乗って。
降りてからも走り通し。
もう、心臓が破裂しそうだ。
それでも、カゲミツは走り続けた。
カウントダウンまであと、5分。
会場は人でごった返している。
その中を必死で走る。
場所は分かっている。
だけど、この人ごみ。
なかなか進まないのがもどかしい。
歩行者天国になっている、ビル街。
ひときわ大きいビルに映し出されたモニタ。
そこにカウントダウンが表示される。
1分を切った。
メインモニタでカウントダウンが始まる。
みんなが、一斉にカウントダウンを唱え始める。
30秒を切った。
目的の場所が見えてきた。
メンバー行き着けの店の前。
そこが、今回のみんなのカウントダウンの待機場所。
もし互いを見失った時もすぐ落ち合えるように。
タマキの考えそうなこと。
とても、彼らしい。
そして、自分にとっても僥倖だった。
あと、15秒。
タマキを見つける。
隣を陣取ってるのは、アラタとカナエ?
いや、それはどうでもいいから。
あと10秒。
タマキのパーカーのフードを掴む。
振り向いて、驚く顔。
あと5秒。
思いっきり引き寄せる。
だけど、言葉は出ない。
「……タ、タマ……キ……はぁ…はぁ……」
息も絶え絶えで。
汗はびっしょりで。
「……はぁ……はぁ……はぁ……、お、俺………」
そんな俺に抱きつきながら、タマキが耳元に囁く。
「来てくれてよかった…」
カウント0。
花火が鳴り響き、や紙ふぶきが舞う中で──。
互いの唇を寄せ合う。
触れ合うだけのキスでも。
もう酸欠寸前。
ただ、この瞬間タマキの唇は誰にも渡したくなくて。
ぎゅっと抱き寄せる。
他のメンバーにちょっかい出されないよう。
「好きだ……」
「俺も……」
意地を張るのも。
やせ我慢も、くそ食らえだ。
今年の自分は、正直に、思いのままにを……モットーに。
そう心に誓ったカゲミツだった。
(えっと、今年のカゲミツの抱負を描くSS?)