「色々ありがとうねタブンネさん。お世話になりました。」

「タブンネ!」


乗務員室まで案内してくれたタブンネにお礼を言う。
私が軽く頭を下げたら、向こうもぺこりとお辞儀をして返してくれた。あらかわいい。
手を振って見送る。


「…さて」


あるかなぁ…









04.お兄さん?









コンコンコン。


パスワードキー付きの扉をノックする。ああなんか緊張するなぁ…。
バッグがあるかどうかも不安だけど、それより変なボロをこぼすんじゃないかとか、そっちのほうが心配だ。
なんというか、上手く取り繕わねばならない。
異世界から来たとか口が裂けても言えないし。下手こいたら精神科送りにされてしまう。
病院行って色々解決するなら喜んで行きますけどね。残念ながら精神は正常ですよチクショウ。


「ハイハーイ」


扉が開くと深緑色の制服を着た、ホームで対応してくれたのとは違う駅員さんが顔を出した。
途端に驚いたような顔をする。部外者が乗務員室を訪ねてきたのだからびっくりしたのかな。


「お仕事中すいません。私、遺失物の件でこちらに来るようにと言付けられた者なのですが…」

「エ、ア、アアソウナノ?…エト、チョットココデ待ッテクレル?」

「はい」


パタン。
ホームで対応してくれた方を呼びに行ってくれたのだろうか。しかしカタコトだったな。
外人さん?なんだろうか?
ポケモンの世界って外国とかあるのかな。
つらつらと栓の無いことを考えていると、またドアが開いて駅員さんが出てきた。
あれ、でもまた違う人だ。この人が担当の人なのかな。


「すんません、お待たせしました。」

「いえ。」


でもこの人はカタコトじゃないや。
って、ん?


「(似てる…)」

「(似てるのさ)」

「(に、似てらっしゃいます…!)」

「(デショー?)」

「「………。」」


なんか後ろに駅員さんがいっぱいいる。
あ、カタコトさんもいる。
てか似てる?って私を見て言ってるよなこの人たち。
…こそこそしてるつもりみたいだけど聞こえてますよー…。


「っだー!仕事に戻れお前ら!お客様に失礼や!」


おお関西弁だ。なんかとってもノーボーダーな世界なんだなポケモンワールド。
関西弁さんがカタコトさんたちを一喝してバタン!と扉を閉めた。
…「痛ッ」とかって聞こえてきた。なむ。


「騒がしくてすみません…こちらです。」

「はい」


案内された先は応接室のようなところだった。
簡易なソファがある。


「どうぞお座りください。今飲み物用意しますんで。」

「えっ!?いやそんなお構いなく…」


何でお茶?
私忘れ物取りに来ただけの無賃乗車犯(仮)なんですが…
もてなされる要素なんてどこにも無いと思うんだけども。


「どうぞ」

「あ、ありがとうございます…」


ああお茶出されてしまった。すいません。


「体調の方はもう大丈夫ですか?」

「え、は、はい。」

「………。」

「………。」


…ちょ、なんでここで無言になるのチョットオオオオオオオ!?
しかもなんで顔ガン見してくるんですか何なの何なの!?
無賃乗車の後ろめたさでなんか拷問受けてるような気分だよ。冷や汗浮かびそう。


「…あ、あの、わ、私遺失物の件で…」

「あ、ああそうですよねすんません!えっとですね…」


なけなしの勇気振り絞って声を掛けるとハッとしたように話を始めてくれた。ちょっとホッ。





−−−−−−−−−−


「そう…ですか」


お話を聞くと、通過各駅に問い合わせてみたものの、今日女性物のバッグの遺失物は届けられていなかったとのことだった。
警察の方に盗難届を出すというお話は一瞬断ろうか迷ったものの、断るのも不自然かと思いお願いすることにした。
盗難扱いにされたほうが色々と都合がいい。
財布も切符も荷物の中で、と言えば取り敢えず無賃乗車でいきなりブタ箱は免れるだろうし。まぁ時間の問題な気はするが。
バッグの形状と中身は、一番持ち歩いているものを適当に答えておいた。

…さてここからだ。保護者がいないことをどう言い逃れたものか。
死んだとでも言うか…?

う〜〜〜〜ん……


「あ、お兄さん方にはバトルが終わり次第ここに来るよう伝えてありますんで、もうすぐいらっしゃると思いますよ。」

「…はい?」


お兄さん?


「…へ?」

「…え?」


関西弁さんと目を合わせしばし沈黙。
…お兄さん?
お兄さんて何。


「え、あ、あれ?お客様って…」


コンコンコーン。ガチャッ


「しつれいしまーすっ ねークラウドぼくとノボリに用ってなーに?」

「クダリ。お客様がいらっしゃるのですからもっと静かに…」

「えっ、ノボリ見てすごい。ぼくらと同じ顔した女の子がいる。」

「は…」


リズムカルなノック音と同時にいきなり部屋に黒い人と白い人が入ってきた。
わぁ全く同じ顔してる。双子だ。一卵性双生児だ。
知り合いに双子っていないから、同じ顔が並んでるのってすごく新鮮。
でもどっかで見たことある顔だなぁ…どこで見たんだっけ…
ああそうだトイレの鏡だ。つまり今の私の顔だ。



「えっ」



もしかして…お兄さん?



「で、クラウドこの子誰なの?」



あ、お兄さんじゃないらしいです。







−−−−−−−−−−

文中では同じ顔、と表現しますが、輪郭が女性だったりとか、そういう些細な違いはあります。
どう見ても女性だが、どう見てもサブマス。
にょたサブマスのイメージでいいかと思います。

あとことごとく名前呼ばれなくてすいません。

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