「痛い痛い痛い痛い…」


ああ、元の世界にいるお父さん、お母さん…ナマエはもう駄目かもしれません…。



…生理痛で死ぬ。……ま、まじで死ぬ。










「ただいまー!」

「ただいま帰りました」


…あ、兄さん達帰ってきた…でも駄目だ、立てない…というか身動きが取れない…。
いつもは玄関先まで出迎えに行くんだけど、無理だ。兄さんごめん。


「ナマエー?…あれ。いない。ノボリー、リビングいない!」


います。ドアからは見えないところにいます。
…でもだめだ、大きい声は出せない。今腹筋使ったら確実に死ぬ。


「…部屋にもおりません。買い物にでも出たのでしょうか」

「んー、でもごはんはできてるみたいだよ?……ってうわああ!?」

「…おかえりなさい、兄さん…ごめんなさい、出迎え…」

「び、びっくりしたあ!そ、そんなところで何してるのナマエ!?」

「ど、どういたしましたか!?」


ハイわたしがどこにいたのかと言いますと、ソファ…の、足元部分の床です。入り口からはソファの背もたれに隠れて見えないとこ…。テーブルはちょっとどかした。
ほら、お腹痛いときって寝てるより前傾姿勢の方が楽じゃないですか…ちょうど…ちょうどね、良くって。高さが。
なんというかこう、座り込んでお腹を抱えてっていう姿勢をしたときに、頭を預けておく場所としてね…。
自室のベッドでもいいんだけど、そっちだと床がそのままフローリングだから腰が冷えちゃいそうで。こっちはラグ敷いてあるし。…あああ痛い痛い痛いいいいいいいいいい

冷や汗を浮かべながら歯を食いしばってる私を見て、兄さん達がすごい勢いでオロオロしはじめた。


「っほ、本当にどうしたの!?顔まっさおだよ!?お、おなか痛いの!!?」

「た、タブンネを捕まえてきましょうか!?」

「…大丈夫。毎月の…ことだから。」


…自分より取り乱してる人を見ると落ち着くって本当だなぁ…。あいたたたた。
てかタブンネで治るもんなのかなぁ、これ…。月経自体は文字通り女性の生理現象なわけで…しかし発想が救急車じゃなくてタブンネなあたりは流石というかなんというか。

あ、兄さん達が『あっ…』っていう居づらそうな顔になった。ああそうだよね生理痛とか男性は反応しづらいよね。…ごめん、兄さん。
…でもごめん駄目だ痛い。ちょっとなりふり構っていられない。

「いたたたたた…」

「…ナマエ。酷く…ありませんか?いつもは幾分…」

「…うん…まぁでも慣れてる…から。多分、もうすぐで波は…」

「えっ、慣れてるって…い、いっつもこんなに痛い、の…?」

「うん…でもいつもは薬で…。う〜体が薬に慣れちゃったのかなぁ…」


だくだくと、体内の貴重な鉄分が流れ出てくのがわかる。私、鉄欠乏性の貧血持ちなんだよ…やめてくれよ…。しかもPMSの気もあるから、直に生理痛が来ちゃうと本当につらいのに。
でも痛くなっちゃってからだと他の薬飲んでも効き目は半減だし…今出来る対処はもう無いに等しい。ひたすらにこの痛みと戦うしかない。つらい。


「何で女ばっかこんな…い"っ!」


いっ、だだだだだだだ!!!!!う、恨み言の一つくらい言われてくれたっていいじゃん畜生!
羨ましい男性が心から羨ましい月に一度のこの悪夢が無い男性が本当に羨ましい。いや勿論、男性は男性で大変な事は多々あるんでしょうけれども!でも男性は生理も生理痛もない!!ずるい!!!

「だ、大丈夫!?痛い!?」

「い、いたい…もうやだ……」

「か、変わって差し上げることが出来たらいいのですが…!」

「ありがとう兄さん……でも多分、何の心構えもせずコレ食らったら…兄さん、死ぬわよ」

「…っそ、そこまででございます、か…」

「女は皆、生まれながらに気合のタスキを持ってるのよ…。」


よく陣痛とかで言うよね、『男だったらくたばってる』みたいなさ…あれ、脅しでもなんでもなく本当にそうなんだろうなって思うのよ…。
DNA的にさ…多分女は人生で痛みを伴うことが多いから、その辺の耐性が結構強く出来てるんだと思うんだ。こう、生物としての進化の過程で。
…でもそんな女でも痛いもんは痛いんだよ!


「…ねぇ、つらいから痛み自慢してもいい?」

「え、ええどうぞ!」

「い、いいよ!ナマエがそれでちょっとでも楽になるなら!」

「ありがとう…あのね、生理痛の症状ってね、お腹が痛いだけじゃないのよ。頭痛や腰痛も併発するし、胸も痛いし、全身がむくむし、すごく眠いし、消化器系の働きおかしくなるし、体力も落ちて吐き気がすることも多いの。
それにメンタル面にも直撃するから落ち込みやすいし気も短くなるし気力ももたないし涙もろくなるし、眠くなりやすい反面不眠にもなりやすいの。正常な睡眠はまず望めないわね」

「「……」」

「腹痛自体もなんか内蔵っていうか子宮っていうか、雑巾絞りされるみたいな痛みでね…こう…体の中の臓器を思いっきり絞られる感じなの」

「「……」」

「ついでに私がなってるPMSってやつはね、月経前症候群っていうんだけど、生理が始まる1,2週間前から、それらの症状が出てくるものなの。私も3〜5日前からお腹が痛くなるわ。」

「「……」」

「人生の大半、こんな症状背負って生きるのよ…」

「「……」」

「…男でよかったと思う?」

「…うん」

「…はい」

「うふふふふ…それでね、PMSと貧血の緩和の為にと鉄剤飲むとだいたい胃腸がやられるのよ。…ハァ。もうやだ。」


痛みにより荒れた気分のままに吐き出してみたけど、ただの自棄だなこれ。…あいたたた。
うーんちょっと気分が軽くなったか?…な??
…多分後から『何で兄さん達にこんな下らない不幸自慢したんだ趣味悪い』みたいな自己嫌悪で落ち込むんだろうな…アハハ先が読める。クソッ。


「…大変、なのですね…」

「…そうなの。大変なの…兄さん達、女性はちゃんと敬って、大切にしてあげてね」

「も、勿論でございます!」

「うん!うち福利厚生はいいって言われるよ!」

「ああそれは大事ね…充実させてあげて…特に休暇制度」





…後日、兄さん達がより私に甘くなって、早まったことをしたと辟易することになるのは、また別のお話。






−−−−−−−−−−

ないようはないよう。
サブマスが生理にびびってたらかわいいなって。

この話のヒロインはただのわたしです…余りに生理がつらいので、こんなものを書いてみた…うう死ぬ。
生理が重くて悩んでる人は、『鉄欠乏性貧血』から来る『PMS』、疑ってみて下さいね…。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -