「はぁ〜やっとついた…」

「ば、ばちゅ〜…」

「あ、あなたのせいじゃないのよバチュル!私がノボリさんに確認を取らなかったのがいけないの。ああ泣かないでバチュル!大丈夫よ間に合ったから!」









10. バトルサブウェイ









遡ること1時間前...


「あ、そういえば。正午にギアステーションって言われたけど、どうやって行けばいいんだろう…道知らないし…」


客間の山を崩しながら、ふと気付いた。
昨日突如この世界に来たから当たり前だが、道が全く分からない。


「ばちゅ?」

「ねぇバチュル。ギアステーションってここから近い?歩いていける?」

「ばちゅ!」

「行ける?そっか。バスとか使わなくて大丈夫なのね?」

「ばちゅ!」

「なら良かった!…バチュル、ひょっとして道案内できたり、する?」


バチュルはクダリさんのポケモンだ。ボールの中なり頭の上なりにいて行動を共にしてるはず。
もしかしたら…?


「ばっちゅちゅ〜!」

「できるの!?」

「ばちゅ!」

「ああ良かった!それじゃ、まだ早いかもしれないけどそろそろ出ましょうか。
私駅員さんでちょっと会いたい方もいるから」

「ばちゅ〜」


...結果。
盛大に迷いに迷った末、ギリギリに到着しました…。

バチュルは、いつも通ってる道だし分かると思ったみたいなんだけど、実際に案内するとなると勝手が違うらしく、なんか全然違うところとかに行ってしまった。
途中、ポケモントレーナーの人にバトルを挑まれたりもしてしまって、この子は私のポケモンではないのでと断るのがちょっと大変だった。
目を合わせるとバトルって怖いわ…。


「ばちゅ…」

「だから、間に合ったから大丈夫よバチュル。ホラもう泣かないで?」


洗濯をし直した、昨日クダリさんから頂いたハンカチでバチュルの涙を拭う。
…ていうか、涙ってちっちゃいほうの…複眼?から出るのね…?


「お。おった。ナマエさん!こっちや!」

「え?ってあ!く、クラウドさん!」


名を呼ばれ顔を上げると、人波の先にクラウドさんがいた。


「こんちわ。ボスから出迎えをするよう言われました。お、それ白ボスのバチュルですか?」

「ばちゅ!」

「こんにちは。あの、昨日は本当にありがとうございました。なんとお礼していいか…」

「え?ああ、いいですってあんなん。こちらこそ昨日はスンマセンでした。嫌な話させてしまって。」

「いえそんな…」

「でも、やっぱボスらの妹さんだったんですね。これからはボスらとライモンに住むんですって?是非バトサブにも遊び来て下さいね」


あ、もうそこまで根回しされてんのか。
まあ、もう断るつもりもないからいいんだけど。 …妹っていうの以外は。
でも、それが一番めんどくさくないのかな。瓜二つで一緒に暮らしますが実の妹ではありません、…とか…取り敢えず妹ってことで合わせておこう。


「じゃ、行きましょか。」

「あ、は、はい!」

「こっちですわ。昨日も行った乗務員室です。」

「はい」


クラウドさんの後ろについて歩く。
そういえばクラウドさんさっきバトサブ?って言ったよな。バトサブってなんなんだろう。
…分からないまま流すのも失礼だし、聞いてみよっかな?


「クラウドさん、ひとつお聞きしても宜しいですか?」

「え?はい、なんすか?」

「さっきおっしゃったバトサブって、なんなんですか?」

「へ?…ああナマエさんってイッシュに来たばっかだったりします?ボスたちからも何も聞いてませんので?」

「は、はい」

「バトサブ…バトルサブウェイってのは、ここのことですわ。」

「ここ?え、でもここってギアステーション…駅ですよね?」

「ああ、正確にはあの電車らを指しますね。名前の通り、バトル施設です。」

「バトル施設?…ま、待って下さい。電車、で、バトル?」

「ええ。ま、知らんかったなら驚かれるのも無理はないですけど」


クラウドさんは笑って続ける。


「走る電車の中でバトルするんですよ」

「え、ええ?わざと電車の中でバトルするんですか?」

「そうです。なんやこのよー分からんところがウケてるんですわ。見所多いライモンでも屈指の名物ですよ」

「へええ…!」


面白いことを考える人がいたものだなぁ。
ビジネスはどんなものが成功するかわからないね。


「でも、ここまで盛り上がるようになったのはボスらが就任してからやなぁ」

「へ。そうなんですか?
というか、すいませんクラウドさん、ノボリさんとクダリさんのことボスって呼んでらっしゃいますけど、お二人って何かされているんですか?服も皆さんとは違いましたし…」

「ボスはボス。そのまんまですよ。ここバトルサブウェイのボス、お二人はサブウェイマスターです。」

「サブウェイ、マスター?あ、あのそれってどういう…?ボスって…」

「バトルサブウェイは勝ち抜き方式を取ってるんですが、各列車の最奥にて待つのがサブウェイマスターです。ボスらと戦うには、少なくとも20連勝しないといけないようになってます」

「に、20連勝!?」

「上位のスーパートレインだと48連勝。もちろん生半可なもんじゃ勝てません。ここは廃人施設って呼ばれる程、バトル狂ばっかが集まってます。そんな奴らを倒して倒して倒した先でやっと会える最強の存在、それがサブウェイマスター。ボスらは皆の憧れです。」

「…な、なんかものすごい人だったんですね?お二人って…」

「そりゃあもう!強いのなんのって!ここの奴らはボスを倒す為に日々バトル戦略を練るのに必死ですよ!わしも時々相手をしていただくんですが、まー見事に足元にも及びません。」

「ふ、ふわー…全然知りませんでした…」


ほ、本当にすごい人だったんだなノボリさんとクダリさんって…!?
って、あ!!わ、私、知らなかったとはいえそんな人のポケモンを一晩まるまる家事なんかに付き合せてしまったよ…!
シャンデラ、バトルするって言ってたもんね?えええ大丈夫なのかな寝不足でちゃんと戦えるんだろうか…!?


「ん?どうしたんです顔青くして」

「…私、昨夜ノボリさんのシャンデラを一晩徹夜で家事に付き合せてしまったんです…バトル、するんですよね?大丈夫かしら…!」

「…家事?炊事洗濯の?」

「は、はい…」

「…………プッ。ク、クククク…か、家事っすか…こ、こりゃええわ…!」

「な、なんですか?」

「い、いや…泣く子も黙るボスのポケモンを徹夜で家事に付き合わせるなん…ブフッ!あ、あはははは!」

「…」

「はー、ひー、苦し…っふふふ……あ、なんや、体力面は大丈夫やと思いますよ?黒ボスのシャンデラはスーパートレイン用のポケモンやし、スーパートレインでボスたちまで辿りつく挑戦者なんてほんと稀やで。休む時間は十分捻出できますよ。はー…ぶふっ」

「そうですか?それならいいんですけど…。あのちょっとクラウドさん笑いすぎ」

「くっくっく…いやーだってそんなん出来るんナマエさんくらいですわ。あー面白。」

「…知らなかったんですからしょうがないじゃないですか。…って!そうですよ!バチュル!」

「? ばちゅ?」


私の肩に乗ってるかわいいこの子!


「この子ここにいて大丈夫なんですか!?バトルで必要なんじゃあ…!」

「え?ああ大丈夫ですよ。バチュルはバトル用のポケモンじゃないんで。あーまぁ追い追いはデンチュラに進化させて調整してくんやろけど。今は使われることはないですね」

「そ、そうなんですか…?良かった…」

「ばちゅ〜」

「流石に白ボスもバトルで使うポケモンを貸したりしませんって」

「だ、だってシャンデラ…!」

「あー。いやまぁそうですけど。あ、着きましたよ」

「え?あ」


気付いたら乗務員室の前だった。
なんだか長々とお話をさせてもらってしまった。
クラウドさんがパスワードキーを解除し、「どうぞ」と中に促してくれる。


「失礼します」


中にお邪魔すると、何人かの駅員さんがいた。
部屋自体はデスクが並んでいてオフィスっぽい雰囲気だ。
休憩室ではなく事務室みたい。
普通のオフィスと違うのはモニターが大量に設置されていることだろうか。


「おや美しいお嬢さん、いらっしゃい」

「ア!昨日ノ!」

「ほんとだ昨日の!こんにちわ!」

「こんにちは、お仕事中お邪魔します」

「クラウド、この方が?」

「そや。ボスらの妹さん。てーかボスらはどこいったん?さっきまでおらんかったか?」

「ア〜、黒ボスハしんぐるニ挑戦者。白ボスハクラウドガ遅イッテ言ッテ探シニ行ッチャッタ。」

「あ〜そか。入れ違いやったな。じゃあ今ノボリさんバトル中か。」

「ウウンモウ終ワッタ」

「なんや、えらい早いな」

「挑戦者が高種族値物理アタッカーばかり集めて力押しK.O.です」

「一瞬ダッタヨネ〜」

「ま、ああいう人はさっさとスーパー行って荒波に揉まれればいいのさ」


おお用語が全然分からない。しゅぞくち?物理?
ポケモンの話だろうか。


「そういうこっちゃな…と、ああ丁度全員揃っとるな。折角や、ボスらが来る前に自己紹介しとくか。
妹さんやからこれから顔合わせることもあるやろ。ナマエさんもいいですか?」

「あ、は、はい是非。」

「じゃー端から、シンゲン。」

「ハーイ。」


あ、昨日のカタコトさんだ。


「シンゲンデス。電車ガ好キデコノ仕事シテマス。ヨロシクネ」

「よろしくお願いします。ナマエといいます。昨日対応してくれた方ですよね?」

「ウンソウダヨ!モー昨日ハビックリシチャッタ!ボスソックリノオンナノコ!」

「あはは…」

「ほいじゃあ次。時間もないからさっさとせぇよ〜」

「ハーイ」

「…ジャッキーです。この地下に暮らしています。よろしく」

「ジャッキーさん。よろしくお願いします。ナマエです」


…と、この調子で駅員さん方一人一人と簡単な自己紹介を交わした。
シンゲンさん、ジャッキーさん、キャメロンさん、トトメスさん、カズマサさん、ラムレスさん。そしてクラウドさん。

…ちゃんと覚えられるかなコレ。


「わしらはボスと同様、サブウェイでのバトル業務のあるちょっと特殊な駅員なんや。バトル業務も通常業務も、多くの部分でボスと仕事させてもろうとる。よろしくな」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

「ま。テキトーに名前覚えてくれると嬉しいわ。」

「クラウドクラウド、敬語取れるのさ」

「あっ。」

「あ、いいですよ敬語なんて。」

「お、そうか?なんやどうにも苦手でなぁ…」

「はい。皆さんも、あまりお会いすることもないかと思いますが、気軽に話しかけてくださると嬉しいです。」

「リョウカイ〜」

「あー!ナマエいたー!」


バターン!けたたましい音を立ててクダリさんが乗務員室に入ってきた。
おおナイスタイミングです。


「ばちゅ!」

「遅いでーボス。どこまで行ってたんや」

「クラウドこそどこ行ってたの〜遅かったからぼくも迎えにいったの!」

「あー聞きました聞きました。えろぉスンマセン」

「みんなで集まってなにしてたの?」

「ああ、ナマエさんに簡単な自己紹介してたんですわ。ちょうど頭数揃ってたんで」

「そうなんだ!あ!そうそうナマエ!ぼくサブウェイマスターなんだよ!」

「ええ、お聞きしました」

「あ、そうなの?ちぇ〜」

「失礼致します。クダリ、ナマエ様、お待たせしてしまい申し訳ございません」

「ノボリ!じゃあゴハンいこっか!」

「ええ。では皆様、申し訳ございませんがわたくしとクダリは昼休憩に入らせていただきます」

「了解。フルですよね?」

「はい、よろしくお願いいたします。」

「よーしごはんだ!れっつごー!」

「ばっちゅー!」


おー元気だなぁ。






と、言うわけで。お昼です。







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クラウドのボス尊敬っぷりは異常だと勝手に思っている。いやぁ喋ってくれました。


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