「え、えええどうしてそうなるんですか」

「ナマエ行くとこない。お料理じょうず。掃除もじょうず。ならここでいい」

「そんな信用できない赤の他人を…」

「他人じゃないよ!顔そっくりだもん!」

「顔がそっくりなだけのれっきとした他人ですよ!」









09. 6V魔法使いゲットだぜ









ああもう埒が明かない。


「の、ノボリさんも何とか言ってください!」

「ここに住んでは如何でしょう」

「あれそっち!?」


これは予想外だ!
あ、でもよく考えれば今日私を家に泊めることに積極的だったのはノボリさんだった!


「な、何でですか!?何を考えているんですか!?」

「家事をやってくださる方をちょうど探していたのです。如何ですか、住み込みということで」

「え、あ、そ、そうなんですか?」


住み込みで家事…家政婦さん?


「…いやあの別で専門の方を雇えばいい話では…私はそういった心得はありませんし」


でも確かに、改めて思えば家政婦さんとかメイドさんとか、そういう人がいてもいいよなぁこの家。
ここまで家事の手が回ってないのに、どうしていないんだろう。
あ、ホットサンド焼けた。


「雇えないからこのような状態なのですよ…」

「雇えないとは、まだ何故」

「今迄に数人の方と契約したことがあるのですが、皆さんが皆さん問題ばかり起こして下さいまして…長続きしたことがないのです。」

「物が盗まれちゃったり〜、契約時間じゃない夜まで居座ろうとしたり〜、盗聴器付けられたり〜。とか」

「うわ」

「ことごとく必要なものが捨てられてしまったこともございましたね」

「おばちゃんは駄目だったなぁぼく…」

「かといって若い方はすぐ色目を使ってこられて…」

「な、なるほど…大変だったんですね…」


高収入の適齢期で独身、更にはイケメンだもんな…ただでさえ家政婦って合う人を見つけるまで大変らしいし。
加えて仕事で家政婦さんが仕事をする昼はノボリさんもクダリさんもいない。確かに問題は起こりやすそうだ。
でも…


「私だってそうなるかもしれないじゃないですか。無一文の身なんですよ?
信用された頃にお金どっさり盗んでトンズラする可能性は高いと思いますけど?」

「ナマエがそういうひとなら今おたま握ってないと思うなぁぼく。」

「これはただの一宿一飯の礼です」

「だーかーらっ!そういうことしちゃうひとはお金盗んだりなんかしないのっ!」

「わたくしもそう思いますが?それに、どちらにしろこの家は家事を手伝って下さる方が必要なのです。
これからまた新しい方を遠からず雇わねばなりません。リスクは同じでございます。」

「…うーん……」

「悪い話ではないかと思われますが?」


まぁ確かに…このポケモン世界で泊まるアテも働くアテも無い私としては、正直とてもありがたい話である。
身分証もないから正規雇用は望めないだろうし。

…だが、今日は何だかんだで泊まってしまったが、いくら顔が似てるとはいえ、見知らぬ男性とひとつ屋根の下というのは、遠慮したいのが正直なところだ。
お二人はいい人だが…うん、まぁ…。腐っても未婚女性の身ですから。一応ね。

それに考えとしては、ポケモンセンターに泊まりながら、日雇いのバイトか何かを探すつもりなのだ。
元の世界に戻る可能性を考えると、長期の仕事もできないし。
掃除してるときに思い出したんだけど、確かポケモンセンターってタダだしね。
うん。


「ありがたいお話ではあるのですが、やはり遠慮させていただきます」

「えぇ〜!」

「ではナマエ様はこれからどうなさるおつもりなのです?」

「日雇いの仕事を探します。宿泊はポケモンセンターで」


あ、そろそろ冷蔵庫からヨーグルト出そ。


「ポケモンセンター?」

「はい。宿泊施設付いてますよね?」

「うん付いてるけど、ナマエは泊まれないよ?」

「えっ…そうなんですか?ど、どうして?」

「ナマエポケモン持ってない。トレーナーじゃない。だからダメ」

「ええと…」

「ポケモンセンターの利用は、全施設においてトレーナーカードの提示が求められるのです。
国営で利用料金は無料なのですが、逆にトレーナーカードを持っていなければ料金を払っても利用することはできないのでございます。」

「そ、そうなん…ですか…」


じゃあ私はてこでも使うことが出来ないわけだ。
えー…多分そのトレーナーカードってのは手続きして発行する類ものだよねきっと…
ああ住所不定無職つらい。


「ってあ!ノボリ!時間が!」

「ああもうこんな時間でしたか。ナマエ様、申し訳ありませんがお話はまた後ほど。ランチをご一緒にいかがですか」

「ぼく着替えてくる!」

「えっ、でも…」

「こちらとしては貴女様を雇わせていただきたく交渉の最中でございます。と、いうことで正午にギアステーションまでお願いいたします。こちらこの部屋の鍵です。」

「う…は、はい「ノボリー!!ぼくのシャツもうない!どこ!?」


ノボリさんから鍵を受け取ると、着替えに行ったはずのクダリさんがリビングに飛び込んできた。
ちょ…上半身裸…
それを見て顔をしかめたノボリさんだったが、直後、サーっと顔色が無くなった。あ、顔怖い。


「…す、すいませんクダリ!!き、昨日クリーニングの受け取りに行くつもりだったのですが…」

「わすれてたの!?えー!ノボリの方にもうないの!?」

「ございません…!と、とりあえず昨日のものを着て、行き掛けに受け取りに向かいましょう!」

「この時間じゃまだお店やってないよお!昨日の着るのもやだよっ 昨日汗かいたもん!」

「で、ではどうするというのですか!?」


お、おおおお兄弟喧嘩勃発。
でもシャツか。シャツなら…


「なにがなんでも昨日着たヤツはやだ!ノボリだって嫌でしょ弟がクサイのは!」

「で、ですが…!」

「…あのー…」


お話中すいませんが。


「Yシャツ、ですよね?それならここに…」


昨夜の産物が。
洗濯糊とアイロンでぱりっとしたYシャツが10着程。

ハンガーに掛けられた大量のYシャツをお二人の前に出すと、お二人の目がまたかっぴらいた。
うっ、怖い。


「…っえ!?なんでなんで!?すごい!」

「あ、昨夜シャンデラの許可が下りたので…脱衣場に丸まっていたものを少々」

「…ブ、ブラボー!スーパーブラボー!!」

「す、すごいすごいすごい!なんで家でシャツが綺麗になるの!?やっぱりナマエは魔法使いだったの!?」

「いや洗濯してアイロン掛けただけでs「ノボリだめだ!魔法使いがうちに来た!逃しちゃだめだ!」ぐえっ」

「ええクダリわたくしもそう思います!!」

「デラッシャーン!」


ああシャンデラ…ボールに戻っていたのに出てきちゃって。あなた寝てないんだから…戻って…
ってクダリさんギブギブ締まってるキュッと締まってる落ちる落ちる!


「ぼくたちが仕事に行ってる間に逃げちゃうかもしれない!捕まえておかなきゃ!」

「ええクダリこれは6V性格一致です!!逃がしたら二度はありません!」

「どうしよう!?」

「ば、馬鹿なこと言ってな、いで…お二人、じ、時間…という、か放、し」

「なんか呪文唱え始めたよノボリ!」

「呪文ではありませんクダリ!首が絞まって息が絶え絶えとなっているのです!殺してはなりません!」

「あ、ほんとだ。」

「…っぷはーーー!!」


軽く落ちかけたわ!!!何してくれるんじゃいボケェ!!!
床に座り込んで咳き込む。うあー苦し。


「なんだか6Vにしては弱いね?バチュルでいいかな?」

「は?」


んだとコラ。


「おいで!バチュル!」

「ばちゅー!」


クダリさんに呼ばれてボールからバチュルが飛び出してきた。
や、やあバチュル、昨日ぶり。
ていうか何、何するの?


「バチュル!でんじは!」

「は!?」

「ば、ばちゅ!?」

「あ、違った。」


おいいいい何しようとしてくれてんのびっくりしたああああああ
ポケモンの技を直接体に受けて無事なのって多分サトシくらいだよこええよ!
バチュル戸惑ってくれてありがとう!


「バチュル、きみには今日一日、ナマエがどっかに逃げちゃわないように監視をすることを命じる!」


…監視とか…。


「逃げちゃいそうになったらでんげきはでバリバリバリ!わかった?」


また物騒な。


「ばっちゅー!」


あ、返事しちゃうんですね…。


「よし!ではまかせたぞバチュル隊員!」

「ばちゅ!」

「行きたまえ!」


…ノリいいなぁ…。
ていうかいや逃げませんけど別に。お昼もちゃんと行くつもりですけど。
まぁいいか…。

クダリさんに命じられたバチュルは意気揚々とわたしの前に躍り出ると、後ろ足で立ち上がってとおせんぼのポーズをし…あ、こけた。やんかわいい。
大丈夫、逃げないよーホラこっちおいで〜 ←骨抜き


「クダリ、早く支度をしてしまいなさい。もう本当に時間がありません、アーケオスで行きましょう。」

「あ、わかったすぐ着る!1分まって!」

「40秒です! ではナマエ様また後程!」

「お昼にね!バチュルよろしく!いってきます!」

「え、い、いってらっしゃ…?ってそっちは窓…!?」

「アーケオス!」


クダリさんが名前を叫ぶと、力強い鳴き声と共に大きな鳥のポケモンが姿を現し、お二人はバルコニーから器用にそのポケモンの背に飛び乗り、瞬く間に行ってしまった。
あー…なるほどそういう…そらをとぶか…便利な世界だなぁ…


「ばちゅ?」

「ああごめんなさいバチュル。何でもないのよ。
…さて、私も軽く頂いて、片付けしなくちゃ。ああそうだシャワーも。シャワーの間にこの服とパジャマの洗濯。」

「ばちゅちゅ〜」

「ふふ。じゃあ私が逃げないように見張っててくださいね?バチュル隊員?」

「ばーっちゅ!」

「いっしょにお風呂は私が感電しちゃうかなぁ〜」









さて…バチュル隊員から逃げられそうにはないから、あの客間が私の部屋になるのかな。

時間が余ったらちょっと片付けをしよう。








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40秒で支度なさいまし!
兄さんのキャラが定まらん…

アーケオスに二人も乗れるのかと一瞬疑問に思いましたが、ポッポでそらをとべる世界なのでなんとかなります多分。


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