「何だよ!いきなり…つめた、」
「うん。ごめんな。でも、冷たい俺の指が気持ちいいんだよな、夏野は」

手は冷たいくせに、耳元に囁きこまれる声だけはやけに熱っぽい気がする。勝手なことを言われて腹が立ったが、抗議の言葉が甘ったるく掠れるのが怖くて、ただ唇を噛む。

Tシャツを捲り上げながら、脇腹を撫で、臍をくすぐり、やがて無い胸に至る指先は、ぞくっと鳥肌が立つくらい、冷たい。けど、背筋が泡立つのは、徹ちゃんの言う通り寒気だけのせいじゃない。

「んん…!」

すぐに立ち上がった胸の尖りをくにくに弄り回されると、それだけでどうにかなってしまいそうだ。それくらい俺は、このつめたい指に慣らされてるし、狂わされてる。

「…ん、は…徹ちゃ、移動、しよう」

いい加減に観念して言ったのに、徹ちゃんの返事は、背後から頬への軽いくちづけだった。

「…夏野は、ちゃんと立ってくれてるだけでいいから」

片手が、下肢にまで伸びてきた。嘘だろ、まさかこんなところでやらかすつもりなのか!?

「嫌だ、やめ……あっ!」

身をよじるより前に、履いていたジーンズのホックを器用に片手で外した指が、滑りこんでくる。ベルトをしてなかったのが、本気で悔やまれた。

「夏野ぉ、やじゃないだろ?こんなに熱くなって、ドクドク言ってる…」
「あんたオヤジかよ…ぁっ…」

悪態はついても、薄い下着を張らせてしまってるモノ。上半身への愛撫だけで高ぶってしまうのが情けない。揶揄するように布越しになぞられて、力が抜けた。
シンクの上で拳を握って顔を伏せると、あらわになったうなじを、ちゅくちゅく音を立てて吸われる。一瞬、血を吸われるのかと身体を固くしたが、本当に徹ちゃんは血を吸うつもりはないらしかった。

「…ひあァ」

ついにずるりと、下着まで剥かれてしまった。ひんやりした外気より、もっともっと、冷たいゆびが絡む。そこが熱く滾っているから、その温度差により敏感になってしまう。だめだ、腰がずくずく重い。力、はいんね…。

「夏野、顔、見して」

乱暴ぎみに、身体をひっくり返される。ずり落ちる身体は、股の間に割り込んだ徹ちゃんの足が支えてくれた。

…俺を見おろす二つの瞳は、普段の穏やかさはなりを潜め、今すぐとって食ってやりたいと獣じみた色。
吸血の時にはどうしても罪悪感が滲むから、徹ちゃんのこういう顔は、こんなときにしか見れない。そう思うとまた、背筋がぞくぞくした。…俺も大概変態だ。

「夏野…そんなやらしい顔、するな」
「…してな、」

そのまま噛み付くような口づけ、息つぎを必要としない彼のペースに翻弄されるうち、ジーンズも下着もすっかり膝の辺りまで降ろされていた。上からも下からも、くちゅくちゅ生々しい粘着音。出来るなら耳を塞いでしまいたい。

「…この色、夏野に似合ってる。すげー色っぽいの」
「るさ……あっ!」

思わず甲高い声がでてしまったのは、徹ちゃんが、エプロンの上から胸の突起あたりに噛み付いてきたからだ。
そのまま何度も執拗に舐めあげられ、唾液を吸った生地はそこだけ黒くなるし、ただでさえ芯の通ったしこりは固くなり、布を押し上げてしまう。それをまた指で押し潰されると、慣れない布の感触がたまらなかった。

「…けど、もっと薄い色だったら良かったのに。夏野の可愛いココが透けんの、見たいなぁ…」

頭が沸いてるか腐ってるんじゃないのかと本気で思う。どっちも屍鬼に言っても仕方ないことかもしれないけど。

「ゃ…めろ、徹ちゃん、買ったばっかなのに、汚れる…」
「んー、そか。だったら、これ、自分で持ってな」

ぺらぺらとエプロンの裾を摘みながら、またとんでもないことを要求されて、目を見開く。

「違っ、そういうことじゃ…」
「…夏野がやなら、仕方ないか。このまま続けるよ」
「くぅ…!」

ぐちゅ、と強めの刺激を股間に与えられて身体が跳ねると、荒いエプロンの生地に亀頭が擦れて、より悶える羽目になった。先走りが、たらりと布の間で糸を引くのがわかる。ああ、こんなとんでもないもので、汚してしまうなんて。

……気がついたら、震える手でエプロンの裾を持ち、ゆっくり、腹の上あたりまでまくりあげていた。

なんだこれ、俺、何してんの。こんな場所で下半身だして、エプロンの下のTシャツは胸の上までまくり上がってるし、自分でこんな変態みたいな真似までして。馬鹿かよ。

もはや頭の中はぐちゃぐちゃだった。せめてもの抵抗というか現実逃避に、固く目をつむる。

「凄ぇ、可愛い、夏野…俺に、見てくれって言ってるみたいだ…」

降ってくるうっとりした声にさえ、耳から犯される錯覚を起こしそうだ。

「…俺に、夏野をいっぱいくれな」
「ひぁ!」

既に完勃ちでぐずぐずのソレが濡れたものに包まれ、耐え切れずに片足が宙をかいた。その足を膝から抱えて、腰をシンクに押しつけ、徹ちゃんがいっそう顔を埋めてくる。根本から先っぽまで丁寧に、けど、根こそぎ奪いとるような激しさで。舐めて。吸われて。

「あ、あっやめ、徹ちゃ、も、でる…から…んん、ーっ、…!」

徹ちゃんの中で迎えた絶頂は、何もかも真っ白でものが考えられないくらい、強烈に気持ち良かった。





「本当にすまん、夏野!なんか、ちょっとばかし、調子乗ったか……な?」

声はいつもの5割増しで情けなく、眉もハの字だし、垂れる耳と尻尾が見えるようだ。さっきまでとは、まるで別人。

けど。買ったばかりのエプロンと男としての何かをぐちゃぐちゃにされた俺としては、しばらく犯人を許してやる気にはなれなかった。

「…絶っ対、もう一生、料理なんかしない。」







★徹ちゃんが変態で別人ですみませ…
屍鬼って勃つのかな?本番までやっていいのか悩む(…)


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