某携帯のCMが可愛かったので、ケータイ=人型というパロ…


▼セラサクver.


一人一台もとい、一人一体のケータイを持つ時代。

「あ〜。ちょう腹減った…」

試合帰りにちょっと街をぶらぶらしてたら、猛烈に腹が減りだした。折よくここは飲食街。うまそうなラーメン屋の赤い暖簾に、ふらふらと誘われていたら、

「あ、だだだだだっ!」

もの凄い力で隣から耳を引っ張られた。いたいいたい!相変わらず容赦ねー!
涙目んなって睨みつけたら、俺の「ケータイ」堺さんは、携帯らしからぬ貫禄で見下ろしてくる。

「アホかお前。ラーメンなんか食ってどうする」
「えぇ〜!俺今日すっげラーメンの気分なのに〜」
「ダメだ。あんなカロリー高いもん食うなっていつも言ってんだろ」
「トンコツ〜チャーシュー〜」
「大人が駄々こねんじゃねぇよ。さっさとウチ帰るぞ」
「…ちぇ。堺さんってほんと口うるさいっすね。ただのケータイの癖に!」

言ってしまってからはっとした。一瞬、堺さんが傷ついた顔をしたような気がしたから。

「さ、堺さ…」

踵を返した堺さんは、とっとと歩きはじめてしまう。持ち主である俺を置いて。

慌てて追いかけるも、そのスピードになかなか追いつけない。ずるい、リーチの差だなんて。

人気の少ない住宅街あたりまで来て、ようやくその背中を捕まえることができた。もう逃がさないように、後ろから手を回してぎゅっと力を込める。

「…ゴメン、堺さん」
「……」
「堺さんのこと、ただのケータイだなんて、ホントは思ったことないス。だって俺、アンタいなきゃ生きていけねェもん」

だから、行かないで。自分で言っててちょっと泣きそうになった頃、ぶっきらぼうな声がきこえた。

「…全く、当然だっつの。スポーツ選手の癖に、一人じゃろくに自炊も健康管理もできねェもんな、お前」
「なんかそれは複雑だけど…けどその通りっス、ハイ」

「あんなモン食わなくても、俺がいいモン食わせてやるってのに」
「…え?」

照れ臭そうな声で、なんか嬉しいコトを言われてしまった気がする。慌てて聞き返そうとしたら、するりと腕の中から抜け出されてしまった。

「帰るぞ、」

ああもう、堺さんって。

「…っス!早く帰りましょ!」
「おいおい…調子いいなあおまえ」

嬉しくって、彼の手を引いて駆け足になる。呆れ声だって、俺の耳には優しい。
やっぱり堺さんは、俺だけの、たった一つの、愛すべきケータイだ。


▼サクセラのようなセラサクが堪らなく好きです

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