▼カゲタマ・おとなりさん設定




「…カゲミツってさあ」
「へ!?」

どきん!と心臓が跳びはねた。いや、自分の心臓の音が乱れてんのはさっきからずっとだけど、それがひときわ大きな悲鳴をあげたんだ。

さっきから俺のベッドで漫画雑誌に夢中だとばかり思っていたタマキが、突然コッチに話しかけてきたから。

「な……なに?」
「いや、カゲミツって、ゲーム好きでいっつもやってる割に、あんまり上手くないよなって思って」

タマキがちらりと視線で指したのは、テレビ画面に浮かぶ「GAME OVER」の文字。さっきからゲームに集中できてないのは自覚してたけど、話しかけられた動揺で、遂にキャラクターを死なせてしまったらしい。

「げっ、あーあ…」

がっくり肩を落とす。どこで最後にセーブしたっけ、またやり直しか…。

「何か、いつ見てもゲームオーバーなってないか?下手の横好きってやつ?カゲミツ、手先は器用なのになぁ」
「……」

こっちの気なんて露知らず、からから笑いながら憎らしいことを言うタマキは、可愛さあまって憎さ百倍…なんてことにはならず、年上で男なのに、やっぱり可愛いと思ってしまう。だからこそ、困るんだよ。


言っとくけど、俺は断じてゲームが下手くそな訳じゃない。むしろそこそこのレベルのゲーマーだと自覚してる。

……タマキがいるときだけだなんだよ!
得意なゲームもからっきし集中できず、全身でその気配ばっかり追って、バカみたいに意識しまくっちまうのは。


口には出せない言葉を飲み込んで、少し唇を尖らせてみせる。

「…タマキには言われたくねぇもん。あんましゲームやんねーだろ?」
「まぁそーだけど。…あれ?でも昔、ちっちゃい頃一緒にゲームやってたときって、カゲミツもっと強くなかったっけ?」
「あー、そうだったっけ…」

苦笑と頭をかいてごまかしながら、そんなの俺だってしりたいくらいだ!と思う。
小さい頃からいっしょにいるのが当たり前だったのに、いつからタマキの前では普通じゃいられなくなった?この部屋での『二人きり』が、こんなに特別な意味をもつようになったのか…

「なあ、カゲミツ」
「へっ!?」

不意に、思いがけず近くから聞こえてきた声に、とびあがらんばかりに驚く。

いつのまにかベッドから降りたタマキは、首を傾げてコッチを覗きこんでくる。男にしては小作りなその顔は、睫毛の数さえ数えれそうなくらい近い…。

さっきはこれ以上はないって思ったのに、また暴れ出した心臓は、タマキにまで聞こえちまうんじゃないかってくらいにうるさい。

いま、ふわって香ってきたスゲーいい匂い、何だろ…さっきもう風呂入ったって言ってたから?

ああ、やばいってタマキ、そんなに顔を近付けたら、俺……


「タマキ!」


思わずがばりと伸ばした両手はあっけなく宙を切り、

−ぱちん。

カゲミツの煩悩を一掃するような音。変わるテレビ画面。


カゲミツの前に乗り出すように屈み込んだタマキの指は、ゲーム機のリセットボタンに伸び。繋ぎっぱなしの2Pのコントローラを持って、何事もない顔で笑っていた。


「な、久しぶりに、俺とも対戦しよ?」
「え、あ、おう…」
「よし。なんか俺でも、今のカゲミツになら勝てそうなきがする」
「ははは…」


ゲームでもそれ以外でも、俺はもう一生、この幼なじみに勝てそうにない…と、改めて思うカゲミツだった。







★タマキ、計算じゃないです(笑)
カゲミツの気持ちにはまったく気付いてません。自覚してからは、日々生殺しなカゲミツ…可哀相〜



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