My honey Our angels



※注意
幼稚園パロです
…といってもメインは、シングルファザーな親同士のカゲ×タマ。
園はあんま関係ないかも。けどカナエとかアラタとか幼児化してたりするんで注意して下さい。








▼出会い編



…ああ、こんな時間になってしまった。もう夏なのに、空の色が変わりかけてる。カナエ、淋しがってるかなぁ、謝んないと。

小さな門を足早にくぐると、ちょうど園の入口に、見慣れたエプロン姿があった。

「トキオ先生!」
「…ああ、カナエくんのお父さん。こんばんは。こんな時間までお仕事大変ですね」

人好きしそうな顔で笑う馴染みの顔に、ほっと息をはく。トキオ先生がいてくれてたのか。ちょっと安心した。
延長保育の世話になってる身として文句も何も言えないが、やっぱり信頼できる先生がいるのといないのじゃだいぶ違うもんな。


トキオ先生は息子のクラスを担当してくれてる保育士さんで、俺と同年代とまだ若い。やたら背が高く、子供相手なんて勿体ないくらいのルックスで、しかも長髪…と見た目はちゃらめ。最初はコイツに大事な息子預けて大丈夫か?なんて心配したものだけど。

意外にちゃんとした人で(俺に冗談言ったりもするけど)、その馴染みやすく気のつく性格で、園児たちの間じゃ人気者らしい。…ママさん達からも、「違う意味」で人気高そう。

やっぱり幼稚園は女の先生が多いから、シングルファザーの俺としても、トキオ先生は話しやすい相手だった。


「すみません、トキオ先生もまだ残ってもらってたんですね。仕事が思ったより長引いてしまって…」
「いーえいえ、可愛い子供たちをほって帰ったりできませんよ。公務員にも残業なんてあるんです?」
「公務員っていっても、俺の場合トクベツなんで…」

公務員は公務員でも、俺の仕事は警察官。しがない交番勤務とはいっても、道案内から書類整理まで仕事は山積みだ。いくら小さい頃からの夢だったとはいえ、妻を亡くし幼い子を抱える身としては、現実はそう甘くない……。

「お父さんが警官してるとこ、一度見てみたいなぁ、俺」
「えぇ?俺のですか?」

そんなの見て面白いか?と首を傾げても、トキオ先生は相変わらずこっちを見て楽しげに口角をあげている。…よ、よめない。からかわれてるのか何なのか…。

「カナエくん、こっちですよ」
「あ、はい。ホントすみません、こんな時間まで迷惑かけて」
「あんなよく出来た子、手なんてかかりませんって。…カナエ〜お父さんが迎えに来たぞ〜」

トキオ先生が横開きのガラス戸をカラカラ開けると、教室には女の先生が一人と、二人の園児しか残ってなかった。

「カナエ!」
「…たまきくん」

子供の一人が振り返り、顔を綻ばせた。…すこし癖っ毛なとこは俺に、色素が薄いとこは死んだ妻によく似てる。タマキくん、なんてホントは子供に許すべきじゃない呼び方も、カナエがやると舌ったらずで可愛い。
駆け寄ってきた小さな身体を、抱きあげてやる。

「ごめんな、こんな遅くなって。いい子にしてたか?」
「…うん。ちゃんとおりこうにして、まってたよ」

ふにゃりと笑うカナエ、母親がいなくて淋しい思いをさせてるのに、物分かりが良くてホントにイイ子だよな。…親バカかもしんないけど、俺の顔まで綻んでしまう。

「…タマキくん、トキオせんせといっしょだったの?」
「ああ、うん。入口で会ったからさ」
「へんなことされなかった?」
「へ?へんなこと?」

首をかしげてトキオ先生をみると、「相変わらず、カナエはませてるなぁ」と、楽しそうに肩をすくめていた。…わけがわからない。

「変なことなんてされないよ。先生に失礼なこと言っちゃだめだろ?」
「…ごめんなさい」

謝りながらも、心なしかカナエがトキオ先生に向ける視線には刺がある。いつも誰に対しても礼儀正しくてイイコなのに、時々トキオ先生だけには厳しいんだよな、カナエ。何でだろう、不思議だ。

「それより、腹減ったろ?おうち帰ろうな。晩御飯はカナエの好物にしてやるから…」
「うん。あ、でも…」

よしよし頭を撫でて床に下ろすと、カナエが少し困った顔をする。不思議に思っていたら、もうひとりの子がとてとてカナエに近づいてきた。

うわ、すっごい可愛い子だなあ。そりゃうちのカナエも可愛いけど、睫毛なんてばさばさで、見ただけじゃ男の子か女の子かわからない。

「カナエのお友達?あそんでくれてありがとうな」

しゃがみこんで目線を合わせて笑うと、びくっと身体を揺らして、慌ててカナエの後ろに隠れてしまった。
あれれ、嫌われちゃったかな…。

「アラタくんていうんだよ。ねんしょうさんだけど、お友達なんだ」
「そっか、アラタくんっていうのか」

男の子かぁ。年小組ならカナエのふたつ下だ。

「アラタくんも、おうちの人まってるの?年小さんなのにえらいなぁ」
「……」

カナエのズボンを握りしめたまま、そっとこっちの様子を伺うアラタくん。人見知りなのかな。
黙りこむ彼にかわり、トキオ先生が答えてくれる。

「アラタくんのとこも、一緒なんですよ」
「…一緒?」
「お父さんと二人暮らし」
「そうなんですか…」

自分と同じような事情の家庭が近くにあるなんて、知らなかった。よく利用する延長保育で仲良くなったのかもしれない。

「…アラタくんのお父さんは、まだ来られないんですか?」
「それが、ちょうどさっき連絡があって。どうしても仕事が抜けられなくて、もう少しかかるみたいでね」

カナエのズボンを握って離さない、小さな手。
…俺たちが帰ったら、先生がいるとはいえこの広い教室にひとりぼっちだ。

男手一つの子育てがどれだけ大変かは、身に沁みてわかる。子供をひとりぼっちにしてしまうことの辛さも。


「……なぁ、アラタくん。もうちょっと、うちのカナエとあそんでやってくれないかな?」
「え…?」
「いいの、タマキくん」

途端にカナエが嬉しそうな顔をした。やっぱり、アラタを一人残すのが心配だったみたいだ。…うんうん、我が子ながら、優しい子。

「先生たちは、職員室戻られていいですよ。俺が二人をみてますんで」
「いや、そんな訳には…」
「まだいっぱいお仕事残ってるでしょう?俺に任せてください」

保育士は、子供達が帰ってからがむしろ大変だってきいたことがある。ただでさえ迷惑かけっぱなしだから、俺にできることがあればしたい。

「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「え、いいんですか?トキオ先生」
「ん、カナエくんのお父さんなら、安心して任せて大丈夫」
「…なにかあったらすぐに呼んで下さいね」

心配そうにしながらも、トキオ先生に連れられて女の先生も教室を出ていった。


仲良くブロックを並べはじめている子どもたちの前に、しゃがみこむ。

「なぁ、よかったら俺もまぜてくれないかな?俺、タマキっていうんだけど。俺も、アラタくんとあそびたいな」

アラタくんはしばらく恥ずかしそうにしていたが、やがてこくんと頷いてくれた。






次はカゲミツサイド。





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