▼カゲタマ・おとなりさん設定



「あ、」

制服のタイをときながら部屋のドアをあけ、ぺらぺらのスクールバッグを放り投げようとしたところで…カゲミツは自室のベッドの上に、可愛い先約の姿をみつけた。

「来てたのか、タマキ…」

ぐっすり眠りこんでしまってるのか、タマキから返事はない。
受験勉強に疲れて、休憩でもしに来たのか?
タマキの手元には、カゲミツの部屋の漫画雑誌が広げられたままだ。

こうした突然の訪問者には、もう慣れた。むしろそれを楽しみに、毎日窓の鍵をあけて学校に行くくらいだ。

けど、いくら慣れたからって、何にも気にせずにいられるかって…、そんなハズない。

だって、考えてもみろよ。

……自分の部屋に帰ったら、好きな子がお出迎えなんて。平気でいられる男なんていねーだろ!

それも、カゲミツがもうずっと長い間片思い中の相手だ。年上の、幼なじみという名のおもいびと。

多少、いやかなり、無駄にドキドキして、顔がにやけちまうのはしょうがない。許してくれ。


音を立てないようにそっと、ベッドのはじに腰かける。ほんの少しの軋み。タマキが目を覚ます様子はない。

「気持ちよさそうに寝てんなあ。…俺のベッドなのに、んな無防備に…」

…人の気もしんねえで。

カゲミツだって結構露骨に好意を示してるつもりなのに、タマキはちっとも気付いてくれないし、かといってコクったりできるほど勇気はない。

「襲われたってしんねーからな…」

できもしないことをぶつぶつ呟きながら、せっかくだから、呑気に眠るタマキを観察することにした。

タマキは俺なんかよりずっとしっかりしてて大人っぽいけど、その寝顔は昔とちっとも変わらず、年上に見えないくらいあどけない。
シーツに散らばる、少し癖のある夜色の髪。肌に影を落とす、男にしては長いまつげ。…それから、微かに開いて寝息をたてる、小さな唇。

その柔らかそうな桃色に、思わず目が、釘づけになる。

…あ、ヤべ、触りたい…。

とつぜん、どうしようもない衝動がわきあがった。心臓がバクバクうるさく騒ぎ出す。

キスする勇気なんて、勿論ねえけど。
ちょっと触るだけ、うんそうだ、それくらいなら……

…つん。

おそるおそる伸ばした指先が、ちょっぴり、本当にほんのすこし、下唇に触れた瞬間。

「んっ、…ふぁ」
「!!」

一瞬で触れた指先から頭のてっぺんまで茹蛸になったカゲミツは、今度はドタバタ音を立てるのもかまわずに部屋を飛び出した。


(ああああややわらけぇっなんだよあんなの俺の妄想なんてメじゃねえし男のくせになんなんだタマキのばかあんな声だしてっつうか俺は何やってんだよバカヤロおおお!!)


「…ふわーあ、ん、寝てた……あれ、つかいま、誰かいなかったか…?」



それからタマキの待つ部屋にカゲミツが帰って来られたのは、たっぷり10分は経った後だった。

…何故って?理由は、察してくれよ(涙)




★カゲミツくん、自爆。
うちの幼なじみパロでは、よりいっそうヘタレみたいです笑




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