▼カゲタマ・パラレル
「タマキ!」
聞き慣れた声がして、タマキは意識を開いたノートの上から、網戸越しの窓の外へとうつした。
「カゲミツ、」
「珈琲いれたけど、飲むか…?」
カゲミツの手には、湯気のたつマグがひとつ。
丁度眠気に襲われかけてたトコなので、「アリガト」と笑って頷く。
一つ年下の彼は、タマキの幼なじみだ。家が隣どうしで、部屋も向かい。窓の距離が近いから、お互い手を伸ばせばモノのやりとりもできるし、移動だって簡単だ。カゲミツの持つ漫画を借りる為に、勝手に部屋に入ることもある。カゲミツはいつも窓の鍵をあけておいてくれるから。
有り難く受け取ったマグの中身をさましてると、何かいいたげな声なき視線を感じた。窓に腕をべったりつけて、じっとこっちを見つめてくるカゲミツ。
「なんだよ…どうかした?」
「いや…。毎日遅くまで頑張ってるな、と思ってさ」
「まあ、もう受験まで近いし」
「…そんな頑張んなくていいのによ」
「へ?」
まさかそんなことを言われるとは思わず、タマキは眉を潜めてしまう。
「なんだよ、カゲミツは応援してくんないの?」
「ばっ!んな訳じゃねーけど」
ぶんぶん首を振るのを見て、ほっとする。そうだよな、カゲミツはいつだって、一番の味方でいてくれるし。
けど、じゃあどうして、そんな複雑そうな顔すんの?
「あんまりイイ高校いっちまうと、後で俺が大変じゃんか…」
「え。なんで?」
拗ねたような口調で呟かれた言葉に、ますます訳がわからない。俺の高校とカゲミツに、何の関係があるんだよ?
「うっ…もういいよ、俺も頑張るから!タマキも頑張れよ!!」
「え、あ、うん…」
俄然勢い込むカゲミツに、よくわからないまま頷いておく。
「クソ、俺も早く年とりてーなぁー」
「えー、ばかだなぁ。受験生なんて何も楽しいことないぞ?」
「いいのそれでも!」
はやく、タマキに追いつきたいから。
夜風にそっと運ばれてきた小さな呟きに込められた大きな意味を、そのとき俺はまだ知らなかった。
★カゲタマで幼なじみは鉄板!
カゲミツ頭いい設定すぐ忘れますw
きっと、タマキがいい高校いく→俺も絶対受かってやる!→勉強ばっかしてたらすげー頭良くなった、と(笑)