一番広い個室にかけこみ、蓋をした便座の上にタマキをそっと座らせた。持ってきたおしぼりで、ほてった頬や額をぬぐってやる。

「大丈夫か…?」

タマキがそんなに酒に強くないのを、カゲミツは知っている。それで何回か心臓に悪い目(いい意味でも悪い意味でも!)にあってるし…。それを、あのヤローが無理やり飲ませたんだな。やっぱり許せん。

柔らかい髪を、そっと労るように撫でる。

「背中、撫でてやろうか?もし胸がムカムカすんなら、好きなだけ吐いちゃっていいし」
「ん、へーき。ここすずしいから、かなりラクになったし……それに、」

ホントは、はんぶん、いいわけだったから。

意識か無意識か、大きな瞳は凶悪な上目遣いで、ぺろりと赤い舌まで覗かせるタマキに、どきまぎした。

「い、言い訳?」
「かげみつと、ぜんぜんしゃべれなかったからさ。……ふたりになりたいなって、おもって」
「!」

…これ、俺の妄想じゃないよな?

そんな顔でそんな可愛いこと言うもんだから、さっきまで抱いてた不満や嫉妬なんて消し飛んでしまった。それからくだらないプライドも。
タマキの手を引いて立たせ、ぎゅうっと腕の中におさめる。ああ、やっと、俺だけのタマキだ。

「…俺もだよ。トキオに取られたみたいで、すっげー悔しかった」

酒のせいか、タマキの肌はいつもより熱い。そんなに酔ってないはずなのに、ふれあうところから熱が伝染するみたいに、カゲミツの身体もほてっていく。

「やっぱ格好ワリーな、おれ…」

ふるふると緩慢な仕種で、タマキが首をふった。

「さっき、ヒカルとたのしそうだっただろ…。おれだって、ちょっとくやしかった」
「あれは…」

完全にトキオへの当てつけだったのに、酔っ払ったタマキは言葉通りに受けとってしまったらしい。…そんなとこも可愛いし、少しでもタマキも妬いてくれたんなら、こんなに嬉しいことってない。

「かげみつ…」

普段より赤く、濡れたように光る唇。これ以上ガマンなんて出来る訳なくて、肩を掴み、ありったけの想いをぶつけるように唇を重ねていた。ああ、ヒカルたちのこと、全然言えねーよな…。

「ん…」

あわせた柔らかい唇からは強く酒の味がして、今日のんだどんな酒よりも甘く、いつだってカゲミツを酔わせてしまう。

「…は…あ…」
「…ん、」

名残惜しい唇を解放するかわりに、もう一度、しっかりとその腰に腕を回した。ことんと胸に額を預けてくれるだけで、何にもかえがたい幸せに陶酔しちまうんだから。


ああ、本当に。
君がここに帰ってきてくれてよかった。


「おかえり、タマキ…」
「…うん、」

…こんな居酒屋の、トイレの中だけど、ちょっぴり涙まで出そうになった。



→オマケ





★「酔っ払いタマキを介抱するカゲミツ+J部隊」
リクエストありがとうございました!
花さまのみ持ち帰り可

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -