▼DC2・12話後
捏造カゲミツ(とヒカル)



じっと見つめた自分の掌は、微かに震えていた。…力いっぱい殴った感触が、まだ残ってる気がする。今はキーボードもまともに打てるか怪しくて、気分展開も出来やしない。

…本当に、これでよかったのか?

「…よ、」

突然、ぽん、と肩に手を置かれて驚いた。ここは俺一人の家(てか車)じゃないから、そりゃ居たって当然の声なんだけど。

「…ヒカルか」
「うわ、ひっどい顔してんなあ」

わざと軽い口調で話してくれるのは、ヒカルなりの気遣いなんだと思う。

「…俺、どんな顔してんだよ」
「んー。まあとりあえず、タマキには見せらんねーな」
「……」

俯いて、がしがしと髪をかいた。そうでもしないと、いてもたってもいられないのだ。

「…バカだよな、カゲミツ。いくらタマキの前だからって、あんな格好いいこと言うから」

ヒカルの声は心底呆れていて、でもどこか同情しているようでもあって。

「本当は、カナエがここに戻ること、許してなんかねーんだろ」

…ああ、短くない付き合いの相棒の目はごまかせない。

「俺だって…あいつを、カナエを、憎みたくないのは、嘘じゃねーんだ…」

皆に言った言葉が、まるっきり本心じゃないワケじゃない。仲間だった頃のカナエと過ごした日々は、確かにカゲミツの心にも根付いてる。カナエはそんなに悪い奴じゃない。いくらそうわかってはいても。

「…けど、あいつに俺は!」

一度、命を奪われかけ。
…それよりもっと大事な人を、目の前から奪われた。

長い眠りから目を覚ましたカゲミツが、突き付けられた現実にどれだけ絶望したか。たった一人の想い人を突然なくして、どれだけ無為な日々を送ったと思う?

記憶をなくしたタマキが復帰したとき、『やっと帰ってきたな』とヒカルは言った。『タマキがじゃねーよ。お前がさ』と、複雑そうに苦笑して。それくらい、タマキのいない間のカゲミツは、酷い状態だったのだ。

やっと、手の届く場所に帰ってきたと思った。もう、絶対に誰にも奪われたくない。それなのに、カナエ、またお前が…

そんな汚い胸の内を、素直に曝す訳にはいかなかった。他の誰に知られても、タマキにだけは。

けど、結局俺は、そんなにキレイな人間なんかじゃねーんだよ。

「クソ、一体どうすりゃいいんだよ…俺は…」

握った拳を、思い切りデスクにぶつけた。この程度の痛み、カナエをぶった時と比べたら何も感じないくらいだ。

ゆるしたい。ゆるせない。ゆるしたい。ゆるせない!

本当に拳一つで、このどろどろした醜い葛藤をサッパリ消してしまえたら。

「…もし俺がお前の立場だったら、絶対許せねぇよ」

ヒカルがカゲミツの拳をそっと制止し、何かいいたげに目を細めた。

「ホントお前、損しすぎ。わざわざ自分で自分の首絞めるような真似して。お前は、お前だけは、カナエを拒否する権利があったってのに」

ヒカルはそう言うけれど。

カナエのこと、未だに憎んでいるのか、タマキを取られるのが怖いのか、それともとっくに許しているのか…

頭の中がぐちゃぐちゃで、自分でもわからないんだ。

ただ一つだけ、確かなのは。
カナエがもう一度、タマキを選んだという事実。


(…ずりぃよな、今更)



ならば、カゲミツのこの想いが届くことは、たぶん、きっともう、











★12話のカゲミツが切なくて…ああはいっても絶対割り切れてないよね…

思ったよりカゲ+ヒカのコンビが好きなんだときづきました
ヒカルは、カナエでもタマキでもなく、全面的にカゲミツの味方だと思います(キヨタカは別格として)




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