▼(キヨ)ヒカ+カゲ(タマ)



「なあ、ヒカル」
「んー?」
「お前って、ホモなんだよな」

突然のカゲミツのトンデモ発言に、ソファに寝転びながらネットブックを弄っていたヒカルは、したたか頭をぶつけた。…このソファ、無理矢理ワゴンに押し込んだ割にはふかふかで坐り心地がいいから、怪我をしなかったのがまだ幸いだ。

「…カゲミツく〜ん?」
「え、違うのか?」

地を這う声で顔をあげるヒカルに、カゲミツはきょとん顔だ。基本的には気のつく男なのに、時々アホみたいにデリカシーがない時がある。まあそういう抜けたトコが、魅力ったらそうなのかもしれねーけど…。

「悪かったなあ、相棒がホモで。変態で。あんな趣味悪ィのと付き合ってて。ああん?」
「いや、俺別にそこまでは…まあ確かに趣味悪ィとは思うけ…あ痛ェっ!」

ムカついたので、めでたい金色めがけてそのへんにあったものを投げつけてやったヒカルだった。確かにろくでもない恋人だが、なんとなく、自分以外に悪く言われると腹が立つのだ。恋するオトコノコは複雑である。

「げ、ヒカル、これ俺のUSB!中身パーになったら…!」
「さっきバックアップ取ったから平気だろ。つーかさ。お前だけには言われたくねえんだけど、カゲミツさん」
「は?なんで?」
「なんでってお前、タマキのこと好きなんだろ」

何でもないようにヒカルがさらりと吐いた言葉に、カゲミツの弓なりの眉が、きゅっとひそめられる。

「誰が?」
「おまえ」
「……誰を?」
「タ、マ、キ」

しばらくワゴン内の時間が止まった…ようにヒカルは感じた。面白かったのでぽかんとしたカゲミツの顔を観察していたら、数秒後、ぼんっと音でも立てそうな勢いで真っ赤に染まっていった。ああやっぱりおもしれー。

「ば、な、何言って…え、ええええ!?ヒ、ヒカル、何で!?」
「いや…あれで気付かない方がどうかしてると思うけど」

主人に懐く忠犬もかくや。毎日タマキの後を追っては、タマキが笑えば顔を緩ませ、落ち込めば慰めようと必死になり、すこしの触れ合いでも真っ赤になって慌てふためく。はたから見てても、意識しまくりなのがわかり易すぎる。というかコイツ、あれで周りに知られてない気だったのかよ。

「やっぱそうか…俺、タマキを…」

カゲミツはまだ赤らんだ顔のままで、がっくりと肩をおとした。

「なに、もしかして自覚すらなかったワケ?」
「いや、最近は自分でも薄々は…。けど、だって、タマキは男だぜ…?」

うーん。ま、確かにフツーは悩むとこだよな。

「なるほど、それで俺に相談しようとおもった訳ね。どうせ、どうしようもねーホモだし?」
「わ、悪かったよ。他に話せる相手、いねーんだよ…」

しゅんとする様子はさながら、耳を伏せる大型犬みたいで愛らしい。まあ何にせよ、こうして頼りにされるのに悪い気はしないか。

ソファから立ち上がり、落ち込むカゲミツの肩にぽんっと優しく手を置いてやる。

「仕方ねえじゃん、好きになっちまったもんは。男でも女でも関係ねーよ」
「…そうだな。けど、俺はよくても、タマキが…。気持ち悪いとか思われたら、生きてけねーよ俺…」
「ああ、それなら」

大丈夫。だってお前ら両思いだろ。

そこまで言いかけて、ふと口をつぐむ。多分、いや間違いなくこの男は、タマキが自分を意識しつつあるなんて気付いてない。ある意味カゲミツの努力は報われた、ってワケだ。それだって、あんなに見ててわかりやすいのに。

…それなら、しばらくほっといた方が面白いんじゃないか?

ヒカルの中の悪戯好きの虫が、うずうず疼き始めた。

「?それなら?」
「あ、ああ、まー頑張れよ。こんだけ一緒にいるんだから、これからチャンスもいっぱいあるだろ。俺、応援してるからさ」
「ヒカル…お前スゲーいい奴…」

きらきらと素直に目を輝かせるカゲミツに、ヒカルは満足げに頷いた。

「よしよし、今頃わかったのか?」
「男の趣味は悪ィけど」
「うるさいほっとけ」


この時ヒカルは、まだ知らなかったのだ。
タマキが、あのカゲミツ以上に、超ド級の鈍感だってことに。



−後日。


「なあ、ヒカル」
「ん、タマキ?なに、俺に用なんて珍しいな」
「ちょっと相談っていうか、あの…お前って…ホモ、なの?」
「……」




(なんかものすごいデジャヴュなんですけど!?)






★私がギャグを書こうとしたのが間違いでした。諜報コンビ可愛いな!


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