▼星リク
設定:荒川出て同棲中
夫=リク・妻=星(笑)




…流石にキツかったな、今日は。
タメ息をつき、重い身体を引きずりながら歩く。

部下のミスで、危うく大事な取引先との契約が白紙になりかけて。部下のミスはトップの責任。社運をかけた一大プロジェクトだったから、社長自ら頭を下げまくって交渉し、迷惑をかけた現場をいくつも駆けずり回った。まだお若い坊ちゃんは社会を知らないから云々、捻りのない厭味も随分言われたっけ。結局なんとか事なきをえたけど、肉体も精神も、ついでに高かった靴の底まで擦り切れた。

「おう、お帰り」

そんなくたくたの状態で辿りついた家のドアを開いたら、歯ブラシくわえた呑気な顔が出迎えたから。なんか一気に、張り詰めていたものがするする解けていってしまった。

「遅かったな。とっくにメシ出来てるし、風呂も……おい、リク?」

大事な書類の入った鞄も床に放って、目の前の意外としっかりした肩に顔を伏せる。いつもは悔しい僅かな身長差が、今ばかりは有り難いと思った。…断じて、こいつに甘えたい訳じゃないけど。今はすこしだけ、こうさせていてほしい。

星は、珍しい俺の行動にか、少し面食らった声をしている。

「なーに、柄にもねえことして」
「…いつも可愛いげなくて悪かったな」
「なんかあったか?」
「べっつに。誰かと違って、俺は、優秀で完璧だからな。あれくらいどうってことないし、こんなことくらいで落ち込んだりしな」

言葉の先を遮るように、大きな掌でぽすんと後頭部を引き寄せられた。ふわり、星のTシャツに染み込んだ煙草の匂いが香る。

「はいはい、わあってるよ。可愛いくない俺のダンナは、日本のトップに立つ、クソ優秀な社長さまだもんな」

ぽんぽんと宥めるように頭を撫でてくる指に、不覚にも泣きそうなくらいほっとしてしまった。改めて、くたくたに疲れて帰ったときに、こうしておかえりを言ってくれる存在がいることの意味を思い知る。

たぶんいま俺、相当腑抜けた顔してる。そんな顔、絶対、星なんかに見せたくないから。そんな言い訳をしながらじっと大人しく抱きすくめられていたら、ふと耳元に唇が寄せられた。

「…お疲れの旦那のために、メシよりフロより先に、イイもんやるよ」
「え?」

とつぜんトーンのかわった声に驚いて顔を上げたら、間近でにっこり、一緒に暮らしてても滅多に見ないような清々しい笑顔。なんだかトッテモ嫌な予感がするんですが。

「嫌なことなんか全部、忘れさせてやるから」

どういう意味だ?
その言葉を追及するより前に、靴を脱がされ、そのまま無理やりベッドに引きずりこまれてしまった。





この後別にいらない蛇足エロ
ぬるいけどR18です







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