▼けい→なつ
「ゆーきさん、おはよう!」
「…清水」
バス停でニコニコと明るい笑顔で話しかけてきたのは、同じクラスの清水だった。…正直、かなり苦手な人物だ。なるべくこうして、二人きりで話をするのは避けたかったくらいには。
「あれ、また国道みてるの?」
「……」
「ふふっ、そうだよねぇ。ゆうきさんみたいにトクベツ可愛い子には、こんなダッサイ田舎なんかふさわしくないよね」
うっとりと目を細めて、こちらを見る、その目線。前から苦手だとは思っていたけど、熱に浮いた瞳の奥のひんやりした冷たさに、ぞくりと、昼間だというのに背筋が粟立った。
ふと脳裏をよぎったのは、最近悩まされている迷惑な無言電話と、不気味な手紙のこと。自分の行動が丸一日、こと細かに記されてあった時は、あまりのことに流石に呆然と立ち尽くしてしまった。…結局このことはまだ、誰にも相談できてない。
あの常に監視されてるような気味悪い感覚が、一瞬、清水の赤みがかった瞳と重なったきが…した。
何が楽しいのか、ニコニコ表情を緩めっぱなしの清水を、そっと横目で観察する。バックにのどかな田んぼを背負い、あかるい日差しを浴びた清水から、もうさっきの負の気配はしない。
…まさか。流石に、考えすぎ。
首をふって、無意識にギュ、と制服のスカートを握りしめる。
(早く来いよ……ばかとーる)
待ち合わせの相手に脳内で悪態をつきながら、今度は都会とは真反対の方向を、すがるような目でじっと見つめていた。
ストーカーけいちゃん(^q^)