▼キヨヒカ
目を覚ますと、温まったシーツにくるまれていた。モノトーンで統一された部屋。シンプルで機能性が重視されてはいるが、どの家具からも隠し切れない上等な匂いがする。…金かかってんな、なんて思うのは、カゲミツとのみみっちい生活にすっかり慣れてしまった証拠だ。
「…部屋ん中まで格好つけやがって」
珍しく隣でまだ寝息を立てる男に、小声で悪態をつく。それでもこんなに居心地がいいと感じてしまうのが悔しい。
「って、もう昼かよ」
時計の短針がてっぺんから傾いているのを見て呆れた。せっかくの休みの半分を寝潰してしまったのか。ってか、俺はともかく、キヨタカには珍しい。それだけよっぽど、昨晩は励んだってことか……
「〜バカ!何を思い出してんだ、俺は…」
ほらなくていい墓穴をほってしまった。俺にだって恥じらいくらいある。いくら最中は積極的でも、後から思い出すといたたまれなくなる…だろ。意趣返しに、肘をついて改めて、悪の根源の寝顔を観察してやる。
「…キヨタカのアホ。むちゃくちゃしやがって。腰いてえっての」
声もこんな掠れてるし、今日一日デカイ声は張れない。帰ったらカゲミツにもからかわれるだろうな。
「自分だけ涼しい顔してさ。寝顔まで整ってて、いちいち腹立つ」
遮るもののない寝顔は、こんなに見慣れてんのにうっかりドキッとしてしまうだなんて反則だ。
涎のひとつくらいたらしてみろよ。
俺は痛いってみっともなく泣くし、気持ちいいってアホみたいに喘ぐ。もっと、弱みとか、格好悪いトコとか、見せてくれてもいいのに。恋人だろ、これでも。
「あんたのそういうトコ、嫌いだ」
「そうか」
「!」
返るはずのない返事が返ってきて、飛び上がらんばかりに驚いた。起きてたのか!?
「バ、バカ!起きてたんなら言えよ!」
「寝てると言った覚えもないぞ?」
「もー、性格悪ぃな!そういうトコも、きら」
言葉の先は、唇に飲み込まれてしまった。それも朝から、問答無用のがっつりディープキス。
「は…」
すっかり力が抜けてしまった俺の腰を支えて、濡れた唇を親指がぬぐっていく。
「…頭ん中エロしかないのかよ。まじで愛想つかしてもしんねえから」
「俺はお前の、そういう嘘つきなところも可愛いよ。ヒカル?」
起きぬけを感じさせない顔で、ニッコリ笑う。俺はもう、悔しいけど白旗あげるしかなくて、こてんと目の前の肩に頭を預けた。
「……うるさい」
そうやってぜんぶお見通しなところも、きらいだよ。
★あまい朝。初キヨヒカでした!