▼カナタマ・DC1・病み
※暗くて救いないです。カナエ別人。病んでます注意。
信じたくなかった。信じられるはずもなかった。
大事な仲間で、いや、いつのまにかそれさえとっくに越えた関係で、心も身体も結ばれてると信じていたひと。
「かなえ、どうして、なんで」
おまえは、ずっと、俺たちを騙してたの。
さっき無理矢理かがされたスプレーのせいか、身体が弛緩して舌があんまり回らない。それより更に鈍い頭で、ぐるぐると考える。こんなのタチ悪い冗談だ、嘘だ、夢だって。
けど、カナエは笑顔で残酷な真実をつきつけてくる。柔らかな笑みはいつもと同じに見えるのに、纏う空気はこんなにも冷たい。
椅子の後ろでキツく縛られた手は、感覚を失いつつあった。
「タマキくん、意外と勘鋭いんだね。予定より早くバレちゃったな」
「かなえ…」
「残念だよ。仲間ごっこも、ようやく上手くなってきたところだったのに」
ハッキリ言われてしまうと、哀しみとか怒りとか恐れとか、感情が絡まって言葉が出なくなる。おれはいま、どんな目でカナエをみてるのかな。
「おれを、ころすのか…?」
「なんで?殺さないよ?」
カナエはあっさりそう答えた。てっきりこのまま、誰にも知られることなく死んでいくものと思ったのに。
「どうして俺が、タマキくんを殺すなんて思うのかな。散々身体にも教えてきたじゃない。こんなに、君をあいしてるって」
耳元に唇を寄せられて、思わず身体がすくんだ。愛の言葉も触れ合いも、今じゃ針のようにじくじく心を刺すだけだ。
「俺が怖い?」
「…っ、ちがう、そうじゃなくて」
「そ。本当は痛いことはしたくないけど…そこまで怯えてくれるんじゃ、ちょっとは期待に応えてあげなきゃって思うよね」
−チャキ。
カナエがポケットから取り出したのは、小型の折り畳みナイフだった。磨かれた刀身が、きらりとひかる。
凶器から反射的に逃げを打とうともがき始めたのを、すぐに肩を強い力で抑えつけられる。
「動かないで。ナイフの扱いは自信あるけど、うっかり手滑らせたりして、こことか切っちゃったら大変でしょう?」
とん、とナイフの柄が頸動脈の上に軽くあたった。とくんとくんと俺の命を刻む場所。本能的な恐怖に身体が芯から冷えて、ぴくりとも動かせなくなった。
「いいこ」
「っ、つ…」
言葉通り、カナエのナイフさばきは鮮やかだった。頬を滑っていく刃先はまるで恋人への愛撫みたいに優しげで、はじめは切られたことに気づかないくらい。後からひりひりとした痛みで、はじめて今切られたんだなってわかるんだ。
「ああ、やっぱり。思った通り、すっごく綺麗」
ひとすじの線から、どろりとした不快な液体が頬を濡らす。カナエは妖しい色を滲ませた声で、うっとりとそれを舐めとった。
「タマキ君は、赤が似合うよ」
「や、…」
必死に顔を背けても、生温い舌は追ってくる。広げるように傷口を舐められると、びりびりと痺れる痛み。
俺はとうとう、情けなく涙をこぼして悲鳴をあげていた。
「もうやめろよ!いやだ、もう、かえりたい…」
頭をよぎるのは、昨日までは当たり前だった光景。
隊長がいて、カゲミツがいて、アラタがいて、みんながいて。
隣には、ふわふわ優しく笑うカナエがいる。
そんな、だいじな俺の居場所。
「ふうん、」
今まで聞いたことないような、低く冷たい声。
はっと伏せていた顔をあげると、カナエが赤く濡れた唇を、ペロと舐めとっていた。俺を見てくすりと薄く笑うブラウンの瞳は、ぞっとするほど冷えきってて。まるで本物の吸血鬼みたいだ。俺は一滴残らず血を吸われて、干からびてしまうのか。
「タマキ君、しばらくここで、イイコにしてて貰える?2時間…や、1時間あれば十分かな」
「え…?」
なんだろう、漠然と悪寒がするのに、思考がまとまらない。いちじかんってなにが、かなえはどこへいくの、わらってるけどたぶんおこってるよな、
……なにに?
「寂しいかもしれないけど、ちょっとの間我慢してて。…今に、君の帰る場所は、ここしかなくなるからね」
さっきとは別人みたいな甘い声で、宥めるように前髪をかき上げ額にキスを落としてくる。
瞬間、カチリとピースのはまる音がした。
「…かなえおまえ、なにするつもりだよ、やめろ、これほどけよっ、だめだ、まって、いくないかないで、やめてっやめてよおねがいだからぁ……!」
「…長い間、ご苦労だった。最後は、随分派手にやったみたいだな」
「まぁ、引っ張れる情報もあれくらいが限度だったからね…。それより、アマネに労りの言葉をかけられるなんて、思ってもみなかったよ」
「何だ。随分ご機嫌なようだが」
「ん……あっちでイイモノ拾ったから、かな。本当に可愛いくてね、ここでも飼いたいと思ってるんだ」
「…ふ、物好きが。勝手にしろ」
★本家でも似たようなEDあったっけ?まぁ気にしない
勝手に七瀬さまに捧げます!