2010 / 10 / 26




本当は好きで好きで堪らなくて一緒にいるこんな些細な時間が大切で仕方ないなんて気持ちは、言葉にしなかったらどこへいくんだろう。このまま俺の中で、じわじわ腐ってったりしないだろうか。そう考えると、らしくない焦燥感めいたものに駆られた。

「…徹ちゃん」
「んー何だ夏野ー?」
「好きだよ」

案外言葉はさらっと出た。うん、なんだ、変に構えなければなんてことないな。

「あんたがすきだ」
「なつの」

ぽかんとした間抜け面を見ていると、胸がすっとする。いつも俺が振り回されてばかりなんだから、たまにはあんたもうろたえればいい。

徹ちゃんはしばらくしてゲームのコントローラを床に置くと、ひょいとベッドに乗り上げてきた。
おおきな両手で俺の頬を掬って、ほんのり赤い目元をとろりとゆるめて、


「……うん。知ってるぞ」


なんだ。心配することなかったのか。


拍子抜けしてほっとしたのと同じくらい、悔しい気持ちがむくむくわいたけど。
ふたりの距離が限りなくゼロになる前に、俺は武藤徹という存在に観念してゆっくり目をとじた。







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