愛されないイヴ | ナノ

「もう!鬱陶しいな!俺様だって忙しいんだからいつでもかまってあげられるわけじゃないんだよ!」

ずがん、と頭を大きな石で殴られたような気分だった。8月2日。俺の誕生日イヴ。

「佐助、」
「なに?」
「え、と」
「言いたいこと決まってから呼んでくれる?」

ばん、と閉められたドアを凝視する。冷たいドアは、もう二度と開かないような気さえして俺は泣きそうになった。

「だって、明日俺、」

誕生日だから。
佐助と俺は付き合ってるんだから、誕生日前日とか、当日とか、一緒にいるのって当たり前なんじゃねぇの。

「佐助、」

なんでこんな寂しい思い、しなきゃなんねぇんだ。そりゃぁ確かに佐助は理系だから夏休みだって課題ばっかで大変みたいだけど。恋人の誕生日くらい、いいじゃねぇか。

目が熱くなって、あぁ涙が出てしまうと思ったけど、俺は冷たいドアを叩いて佐助を呼ぶ気にはなれなかった。

「かまって。」



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