7 | ナノ

毒を盛られてからというもの、なんだか伊達が気になる俺です。いや、気になるのは元々だ。あんな奇抜な奴、気にならない方がおかしい。そう、最近の傾向としては、

「せんせ、す、き」
「……はい、どうも。」

日焼け止めのにおいがするくらい近くで囁かれたその言葉に、嫌悪感を感じなくなっているという現状なのです。これは完全に毎日作られる手作り弁当に盛られている微量の毒が俺の脳細胞を破壊だか麻痺だかさせ、伊達に対する警戒心やら嫌悪感を根こそぎ奪っているのだ間違いない。

「せんせってさ、」
「ん?」

テストの採点をしながら伊達の話を聞く。本来生徒の前ですることではないけど、伊達だから、まぁいっかって。

「この学校で浮いてるよな」
「お前にだけは言われたくないよ」

そう言ってペンを走らせる。知ってるさ、そんなこと。生徒からなめられてることも、やる気が見られないと他の先生方から思われてることも。そんなことわかってるさ。でも俺は別に、なりたくてこの職業に就いたわけでもないし、思い入れなんてほんの少しもないんだ。だから何言われようがどう思われようが少しも気にならない。

「せんせ、」
「なによ俺今仕事中なんですけど」
「俺はせんせが好きだからな。」

節電対策の為にクーラーを切っている準備室は暑い。お互いにじとりと汗をかいている筈だ。でも俺は、背中から腕を回し抱きついてきた伊達を振り払うことをしなかった。



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